『ブラッサム』村上蘭が朝ドラ初出演で見せる表現力 渡部篤郎にも負けない堂々とした演技

 今週から放送がスタートしたNHK連続テレビ小説『ブラッサム』。主人公・葉野珠の幼少期を演じるのが、村上蘭である。朝ドラ初出演とは思えないほど、物語の序盤から堂々とした芝居を見せている。

 2014年生まれの村上は、これまで『遺留捜査』(テレビ朝日系)やNetflixシリーズ『イクサガミ』、映画『泥の子と狭い家の物語』など映像作品への出演歴はあるものの、まだ広く名前を知られている俳優とは言い難い。そんな彼女が、426人が参加したオーディションを経て、朝ドラの主人公の幼少期という大役を掴んだ。

 筆者が観ていてまず惹かれたのは、村上が見せる表情だ。第1話ではっさくを口に運んだ瞬間、頬が緩み、顔いっぱいに笑みが広がる。何気ない場面ではあるが、その笑顔が実にいい。弟の守と接するときには姉らしい顔を見せながら、ふとした瞬間には年相応のあどけなさも覗く。珠が本来持っている朗らかさを、村上は作り込んだ印象を与えることなく、ごく自然に滲ませている。

 その表現の幅がよく分かるのが、第2話で清治(渡部篤郎)の理不尽な怒りを買い、蔵に閉じ込められる場面だ。罰として一晩を過ごすことになった場所にもかかわらず、珠にとって蔵は“天国”でもある。そこには小説などの読み物があり、好きなだけ本の世界に浸ることができるからだ。清治に叱責された直後にもかかわらず、そこに楽しみを見つけ、ぱっと表情を明るくする珠。その気持ちの切り替わりを、村上は生き生きとした芝居で見せている。

 そして何より目を引くのが、父・清治を演じる渡部篤郎とのシーンだ。家に帰ってくるだけでその場の空気を張り詰めさせる清治を前にしながらも、村上は決してその存在感に飲み込まれない。それまでの柔らかな表情から一転、すっと顔つきを引き締め、相手をまっすぐに見据える。雨の中、裸足でカナリアの餌を買いに行くよう命じられた場面でも、取り乱すことなく、キリッとした表情で清治と向き合っていた。

 清治役の渡部は、言うまでもなく数多くの作品を経験してきた俳優だ。その渡部を真正面に置いた芝居でも、村上は画面の中で縮こまらない。珠の負けん気や芯の強さを、堂々とした佇まいで表している。相手の圧を真正面から受けながら、そこに自分の芝居を返していく。まだ出演作の多くない12歳の俳優とは思えないほど、落ち着いた演技で驚かされる。

 制作統括の村山峻平は、成長後の珠を演じる石橋静河と村上に共通する魅力として「意思のある瞳」を挙げている(※)。確かに、清治を前にした村上の表情には、その言葉に通じるものがある。厳しい父を前にしても必要以上に萎縮することなく、視線を逸らさずに立ち続ける。言葉を発していないときでさえ、珠の内側にある感情がその瞳から伝わってくるのだ。

 『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 ブラッサム Part1』(NHK出版)で村上は、「監督や、お父さん役の渡部篤郎さんにもお芝居のアドバイスをいただき、とても勉強になりました」とコメントしている。渡部から芝居のアドバイスを受けながら、その渡部との場面で堂々と渡り合っていることも印象的だ。まだキャリアの浅い俳優ながら、共演者との芝居の中で自分の存在をしっかりと残せることも、村上の大きな魅力である。

 もちろん、まだ12歳。これからさまざまな役柄や共演者と出会うことで、芝居の幅もさらに広がっていくだろう。だからこそ今作で見せている、相手役に飲み込まれない眼差しの強さ、無邪気な笑顔から張り詰めた表情までを行き来する豊かさが、この先どのように磨かれていくのかが楽しみになる。

 『ブラッサム』は、これから名前を覚えておきたい若い俳優との出会いにもなりそうだ。

参照
※ https://realsound.jp/movie/2026/05/post-2401054.html

■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK

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