松山ケンイチの“プロフェッショナルぶり”再び 『時すでにおスシ!?』が描く大人の青春

 唯一義務教育下と違うのは、生徒の学習の目的が明確である点だろう。みなとのクラスメイトで言えば、柿木(ファーストサマーウイカ)にはコンサルから鮨職人へのキャリアチェンジ、森(山時聡真)には手に職をつけるという目標がある。立石(佐野史郎)の自分が握った寿司で家族を笑顔にしたいという思いも立派な動機だ。決して安くない学費を自分で払い、かつ学生時代よりも限られた時間を学習に費やすのだから、当たり前と言えば当たり前かもしれない。自分には原動力となるものが何もないと早くも退学を考え出したみなとを思い留まらせたのは大江戸だった。

 自分を犠牲にしてまで子育てを頑張ってきた人ほど、子どもが巣立った後に「自分には何もない」という虚しさを抱きがちだ。だけど、本当に何もないのだろうか。毎日朝早くに起きてお弁当を作ったり、散らかった部屋を片付けたり、将来の学費のためにコツコツ貯金したり、子どもの忘れ物をわざわざ学校まで届けに行ったり。誰にでもできることではないし、それほどまでに誰かに愛情を注げる人が無力なはずがない。みなとが渚に愛情をかけてきた手に鮨職人としての素質を見出した大江戸は、「その手で続けていれば、いつか自分のために始めたことが誰かのために繋がることもあるかもしれません」と告げる。

 人より秀でた才能もなければ、明確な目標や高いモチベーションがあるわけでもない。ごく普通の50代、画面の向こうにいる「あなた」あるいは「あなたの母」を永作が等身大で演じている。でもだからこそ、そんな主人公が第2の人生を歩み始める姿に勇気をもらえる人も多いのではないだろうか。永作が14年ぶりに民放連ドラの主演を務めること自体、ある種メッセージ性を含んでいるように思う。何かを始めることに、「時すでにおスシ」なんてことはない。人生という舞台で主役になれるかどうかは、いつだって自分の気持ち次第だ。

 もちろん、若い頃のようにはいかないことも多いかもしれない。だけど、ひとりで難しいことは誰かに頼ればいい。みなとが小学生の男の子が落とした靴を拾って走り出したかと思えば、途中で体力がつき、代わりに大江戸が走って届けるシーンは非常に象徴的だった。大江戸が伴走ランナーとして、まだ見ぬ人生の1つの到達点に向かって走り出したみなとに最後まで付き添ってくれるのではないだろうか。

■放送情報
火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:永作博美、松山ケンイチ、佐野史郎、ファーストサマーウイカ、山時聡真、中沢元紀、関根勤、杏花、平井まさあき、有働由美子、猫背椿
監督:坪井敏雄、岡本伸吾、金子文紀
脚本:兵藤るり
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:益田千愛、鈴木早苗
主題歌:Creepy Nuts「Fright」(Sony Music Labels Inc.)
製作著作:TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/
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