『冬のなんかさ、春のなんかね』“水色”が示す別れの予感 今泉力哉は“好き”の意味を問う

 『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)が3月26日に最終話を迎える。第1話で「私は好きにならない人を好きになる」と言った主人公・土田文菜(杉咲花)が、「好きにならない人」だったはずの佐伯ゆきお(成田凌)を本当に「好きになった」時、残酷にも恋は終わりへと向かっている。「はっきりさせると必ず終わる。終わりがきたらきっと寂しい」。その予感とともに、「好きな人の幸せ」を一番に思いながら、それでもその「幸せ」の片隅にいたいとそっと願わずにいられないやさしい人々の物語の終わりは、春の訪れとともにやってきた。

「知りたい」からこそ直面する、「私はあなたじゃない」という切なさ

 「誰かを好きになる」ということは「知りたい」と思うことだ。それは、第4話において、小説家の小林二胡(栁俊太郎)が文菜に対して言った「知りたいかも。思考?」という投げかけや、第8話において、旅先で白い犬と戯れているゆきおを見て「もっともっとこの人のことを知りたいと思った」文菜の心情が当てはまる。

 そして人は、「知りたい」という思いを突き詰めたその先で、「あなたと私が違う人間であるということ」への悲しみに突き当たる。第8話の文菜が、山田線(内堀太郎)からの「(ゆきおと)出会えて良かった?」という問いかけに対して「そうですね私は」と返し、さらに「向こうは?」と聞かれて「私は彼じゃない」から「私には分からない」と返すように。どんなに「知りたい」と願っても、「私はあなたじゃない」から分からないために、彼ら彼女たちは何度も間違い、すれ違う。

 第5話で描かれた大学3年生の頃の恋人・佃武(細田佳央太)の「翌日の動物園デートが楽しみすぎて眠れなかった」というデート当日のあくびの理由を、文菜が別れの日に知ったというエピソードが、第9話の、ゆきおから「初めて会った場所」に呼び出されたことに動揺して眠れなかった文菜の、待ち合わせ当日のコインランドリーでの居眠りに繋がっていること。そして何より彼女がゆきおのために編んだ「温泉ズ・ブルー」のマフラーこそが、それぞれの「やさしさ」がどこまでもすれ違う様を描いたもののような気がしてならないのだ。

「温泉ズ・ブルー」と「壁の水色」が暗示するもの

 印象的な場面がある。第6話の序盤において、ゆきおに髪を切ってもらった文菜は、その後「店のさ前の通りのさ、向かいの建物の壁の色かわいくない?」と話しかける。ゆきおは毎日見ていたはずの自分が思いも寄らなかったことを文菜が指摘したことに、さすがだと思って盛り上がる。それこそ第1話の出会った時の2人が話していた「日常の中の非日常」がそこにあるからだ。

 さらにその場所に、その時点で既にゆきおのことが好きなのだろうゆきおの同僚・紗枝(久保史緒里)が呼ばれ同意を求められ、紗枝が「はい、ここで働き出してからずっと思ってましたよ、水色かわいいなって」と言うことで会話は自然と終わっていく。そこに滲む、好きな人と「好きな人が好きな人」の間に生まれた「特別」を当たり前のこととしてかき消そうとする紗枝の僅かな抵抗もまた、その後の文菜・ゆきお・紗枝の三角関係の予兆となっている。

 話を元に戻すと、第8話でゆきおが文菜にプレゼントしたカーディガンの色を文菜は「温泉ズ・ブルー」と言った。それはゆきおが「青い謎固形燃料見ると温泉来たなって、旅行してるなあってなる」と言ったからで、だから彼女は、誕生日プレゼントに手編みのマフラーを頼まれた時、彼の好きな「温泉ズ・ブルー」の糸を選ぶ。でもそのカーディガンの水色は、本来ゆきおの好きな「温泉ズ・ブルー」ではなく、彼にとっては、文菜が好きだと言った美容室の前の通りの向かいにある建物の壁の色だったのではないか。そして、お互いが好きな色を思って選んだはずの「水色」が、最終話の予告を観る限り、2人の別れを予感させるものになっている。

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