『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』にみる、メディアミックスとしての挑戦と課題

 2024年に映画作品として第一歩を刻んだ、実写版の『ゴールデンカムイ』。それは、かつて実写化が難しいと言われた野田サトルの人気漫画を、原作の再現を徹底して目指すという、正面からの突破による映像化だった。近年、実写ドラマ版『ONE PIECE』をはじめ、世界観へのリスペクトと同時に独自の展開や設定が抑制されつつある漫画原作アニメが増えている状況にあって、ある種の「IP(知的財産)ビジネス」のモデルケースの一つといえる。

 劇場版から、WOWOWによる連続ドラマシリーズを経て、再び劇場版へと回帰し、今回公開された本作『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』。このメディアミックスの往復運動もまた、『鬼滅の刃』などの、同じシリーズのストーリーを表現する際に、状況によって媒体を選んでいくスタイルに適合させようとした試みだと考えられる。

 本作『網走監獄襲撃編』は、原作の長大なサーガにおいて、5分の2を締めくくる意味がある。この進捗率は、同じく山﨑賢人主演の実写映画シリーズ『キングダム』や、例えば実写ドラマ版『ONE PIECE』などのそれと比べると、ストーリーを忠実に再現して完結させるという意味において現実的なところまできているといえよう。ここまで早いスパンで走り抜けているのは、そもそも原作が比較的短いといった利点のほかに、実写ドラマの撮影を、映画公開の反応を待たずに連続させたこと、そして原作要素をテンポ良くカットした点にもあるだろう。

 黄金を追う旅の始まりを描いた、第1作の映画。宝の在処を示す“刺青”を追ううちに、仲間や勢力との共闘が描かれるドラマシリーズ『北海道刺青囚人争奪編』。そして、明治政府による北方の支配の象徴といえる「網走監獄」へと一気に収束していく本作。この舞台の転換こそが、映画としてエピソードを描く意図なのだと考えられる。

 『ゴールデンカムイ』の時代設定である明治末期は、火災によって全焼した網走監獄が明治45年に復旧し、受刑者を効率的に管理する画期的な「放射状舎房」が完成したタイミングでもあった。本作で姿を見せる特徴的なこの建物の姿は、当時の北海道においては類を見ない近代建築だったと伝えられている。とはいえ、本州ではこの種の檻房建築は数十年前から存在していた。明治5年に制定された「監獄則並図式」に則って建築された、監房棟が放射状に並ぶ洋式の建築は、監視室から各監房棟の廊下が少ない人数でも見渡せるという意味で、非常に合理的な機能美があった。(※)

 筆者は最近、愛知県の野外博物館「明治村」で、同様の設計である「金沢監獄」の看守所・監房が移築された展示を見学した。実際に監房の中に入ると、非常に狭く息が詰まりそうになったが、妙な落ち着きも感じられる。しかし一歩檻房を出ると、すぐに看守からの監視の目が届くという緊張感。本作では、玉木宏演じる鶴見中尉が逃げ場のない監房棟の廊下に機関銃を撃つという凶悪な場面があるが、それがいかに残虐なアイデアであるかということも実感できた。“囚人の監視”を“効率的な殺戮場”へと転換させる試みは、国家の機能と生身の人間という、シリーズに横たわる対照的テーマを浮かび上がらせる。

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