史実にはない「熊本移住の動機」をどう描いた? 『ばけばけ』が選んだ“人間らしい”答え
第93話のラストで描かれたのは、トキがひとり宍道湖畔で思いを巡らせるシーン。台本には「宍道湖畔」とだけ書かれていたが、演出のために桟橋を建て、大きな船へと渡るための小舟も用意した。
撮影当日、残念ながら現場には立ち会えなかったという橋爪だが、「『ばけばけ』ではナレーションで説明することもないし、登場人物が自分の心情を語ることもなくて。みなさん芝居が達者で表情で語れる方々ばかりなので、それを全面に生かした演出やシーン作りをしてきました。今回も髙石さんが湖を見つめて、最後の松江の景色に思いをはせる。それだけでトキの決意を表した、すごく感情的なシーンになっていると思います」と手応えを語る。
「言葉で説明すれば、『ああ、そうなんだ』で終わりだと思うんですね。『この人はこういう思いだったんですよ』と言ってしまえば“。(マル)”がつくけど、人間の思いはそんなに単純なものじゃなくて。松江から離れたい思いもあるし、離れたくない思いもある。みんなに助けてもらえて嬉しい気持ちもあるし、なんでみんなに助けられているんだろうという気持ちもある。ヘブンはなぜ嘘をついたのか、どこの歯車が狂ってしまったのか……その複雑な感情が、説明することで一色になってしまう。セリフにせず表情で魅せることで、観ている方の感情により訴えかけるものになればいいなと思っています」
なお、トキが自分の本心と向き合うきっかけとなったのは、サワ(円井わん)の「誰も知っちょる人がおらんってことは、周りも誰も自分のことを知らんってことだけんね」という言葉。
橋爪は「おサワだって離れたくないと思いますが、トキの背中をちょっと押してあげたんでしょう」と2人に寄り添いつつ、「もしかすると、サワはそこまで深く考えていなかったのかもしれないですけどね。自分自身に重ねた本音かもしれません」と笑ってみせた。
いよいよ熊本行きが決まったトキとヘブン。親友・サワはもちろん、錦織との別れがどう描かれるのか。物語は大きな転機を迎えそうだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK