元アイドルの齊藤京子が再びセンターに 『恋愛裁判』が描く“虚像”と“素顔”の境界線

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、アイドルといえばモーニング娘。世代の宮川が『恋愛裁判』をプッシュします。

『恋愛裁判』

 『恋愛裁判』と『AI裁判』(『MERCY/マーシー AI裁判』)、まさかの“裁判対決”が勃発した1月23日公開の新作映画。ここでは、深田晃司監督が元日向坂46の齊藤京子を主演に迎え、“アイドルが恋をすることは罪なのか”というテーマを描いた『恋愛裁判』を取り上げたい。

 今や日本特有の文化へと進化した“アイドル”。ここ日本で普通に生活していれば、テレビやラジオ、YouTubeやTikTok、そして街中のどこかで1日に一度は目にする存在だろう。そのタイトルやポスタービジュアルから、“硬派な法廷劇”を想像させる『恋愛裁判』だが、思いのほか、アイドルの裏側が非常にリアリティをもって描かれていることが驚きだった。

 物語の主人公は、人気急上昇中のアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のセンター・山岡真衣(齊藤京子)。ある日、彼女が中学時代の同級生・間山敬(倉悠貴)と再会し、恋に落ちたことから事態は動き出す。事務所が課す「恋愛禁止条項」という名の枷と、一人の女性としての素直な感情……。その狭間で揺れる彼女を待ち受けていたのは、ステージの輝きではなく、冷徹な法廷の場だった。事務所社長(津田健次郎)やマネージャー(唐田えりか)らから、損害賠償を求めて訴えられるという、あまりに無機質な現実である。

 本作の白眉は、何と言っても主演を務めた齊藤京子の存在感だ。日向坂46ではセンターも務めた経験のある彼女が、グループ卒業後に映画の中で再びアイドルグループのセンターに。その事実自体が、作品に抗いようのないリアリティと批評性を与えている。劇中、法廷で「自分の気持ちに嘘をつくのが嫌だった」と吐露する真衣の表情には、単なる演技を超えた、表現者としての凄みが宿っていた。

 そのほかのハッピー☆ファンファーレのメンバーには、私立恵比寿中学の清水菜々香といぎなり東北産の桜ひなの、そして元STU48の今村美月と、現役のアイドルやアイドル経験のある面々が揃っているのも説得力がある。唯一アイドル経験のない小川未祐は、『よこがお』に続いての深田晃司作品出演で、確かな演技力を発揮していた。

 深田監督は、これまでも『淵に立つ』や『よこがお』で、個人の尊厳が社会や他者によっていかに容易く侵食されるかを描いてきた。本作でもその手腕は冴え渡っている。主題歌をyamaが担当し、音楽プロデュースにagehaspringsが名を連ねるなど、エンターテインメントとしての純度を保ちつつも、その核心にあるのは「人間としての当たり前の権利」をめぐる戦いだ。2010年代以降、実際に起きたアイドルの恋愛裁判をモチーフに、深田監督が10年の構想を経て完成させた本作は、単なる芸能界の裏側暴露ではない。山岡真衣が選んだ選択を我々観客はどう受け取るか。ぜひ“裁判”の目撃者になってほしい。

■公開情報
『恋愛裁判』
全国公開中
出演:齊藤京子、倉悠貴、仲村悠菜、小川未祐、今村美月、桜ひなの、唐田えりか、津田健次郎
企画・脚本・監督:深田晃司
共同脚本:三谷伸太朗
音楽:agehasprings
主題歌:「Dawn」yama (Sony Music Labels Inc.)
制作プロダクション:ノックオンウッド、TOHOスタジオ
配給:東宝
製作:「恋愛裁判」製作委員会
©2025「恋愛裁判」製作委員会
公式サイト:https://renai-saiban.toho.co.jp/
公式X(旧Twitter):@ren_ai_sai_ban
公式Instagram:@happy_fanfare
公式TikTok:@ren_ai_sai_ban

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