『終幕のロンド』草彅剛と風吹ジュンの死を見つめる対話 遺品整理が担う思いの共有
10月20日放送の『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系)第2話では、それぞれの死との向き合い方が描かれた。
第2話の週タイトルは「遺品整理で蘇る父…」だった。去り行く人の思いを、残された者はどれだけ知ることができるだろうか。もしかすると、故人は知られずに済ませようとしていたかもしれない。残された物や言葉、記憶をたどって、私たちは故人の遺志を知る。思いもかけない真実が、そこに隠れていることも珍しくない。
第2話で、遺品整理会社「Heaven‘s messenger」に遺品整理を依頼してきたのは、木村遼太(西垣匠)だった。遼太は父親の遺品の中から、妹・里菜(山下愛織)の留学費用700万円を見つけてほしいと依頼する。チーフの海斗(塩野瑛久)を中心に、樹(草彅剛)たちは丁寧に作業を進める。しかし、探しものは見つからず、里菜はいらだちを募らせる。
その頃、真琴(中村ゆり)は、母のこはる(風吹ジュン)に近づく樹を悪徳業者ではないかと疑っていた。こはるは真琴に自らの死期が近いことを隠しており、樹に対して心を開いていることも、真琴の不信感を強める一因となった。
「死ぬってことはその人だけのもので、親子でも夫婦でも誰とも共有できないものだから」
こはるが樹に向けて発した台詞だ。妻の病気に気づけなかったと自分を責める樹に、こはるは、死はその人だけのものと諭す。こはるが真琴に自身の病気を伝えないのは、誰の世話にもならずに逝きたいという意思のあらわれで、「死ぬからわかってなんて、死んでいく者のエゴよ」と気丈に言い放つ。
肉親であるがゆえに、わかりあえないこともある。他人の樹に話すうちに素直になれたこはるは、娘の真琴に「言い訳だけはしたくない」と思っていたことを認める。そうやって自分と娘を守ってきたのだろう。
死との向き合い方は人それぞれだ。樹にとって、こはるの言葉は過去と向き合うヒントになった。その樹は、ゆずは(八木莉可子)に、遺族は心が傷ついていて癒しを求めていること、その表現は泣く、話す、怒るなど、人によって異なると語る。激しいクレームとして表出するとしても、根底には喪失感と悲しみがあって、気持ちを受け止めることも自分たちの仕事だと言うのだ。
樹の言葉は、死を昇華するプロセスを指しており、ある種の死生観の反映でもある。遺品整理の業務内容については異論があってしかるべきだ。他方で、死という重い事実を受容するプロセスに、遺品整理を位置づけることができそうだ。劇中で、故人が残した大切なものを探す作業は、探していたものがない結果になったが、同時に遺族が死を受容するステップになっていたのが印象的だった。
生者と死者、残された者と去り行く者。『終幕のロンド』では、異なる人生のステージを歩むキャラクターが登場し、各人の死との向き合い方が描かれる。生前整理を依頼したこはる、息子の死と向き合う磯部(中村雅俊)、御厨ホールディングス社員の自殺を追う記者の波多野(古川雄大)は、自身の心に死という宿題を抱えている。それらを、死がもたらすものとの対峙と言い換えることも可能だろう。
「よく死ぬことは、よく生きることだ」という言葉がある。死が明らかにするのは、生前のその人の生きざまに他ならない。血のつながらない兄妹の父親は、大金を残すことはできなかったけれど、事業に失敗しても懸命に働き、子どもたちに愛情に満ちた足跡を残した。父が立派に生きたことを伝えるのも遺品整理の範疇に入ると考えるのは、決して誇張とは言えないはずだ。
『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』の高橋美幸が脚本を手がけたヒューマンドラマ。遺品整理人である主人公が、遺品整理会社の仲間たちとともに、さまざまな事情を抱えた家族に寄り添っていく。
■放送情報
『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:草彅剛、中村ゆり、八木莉可子、塩野瑛久、長井短、小澤竜心、石山順征、永瀬矢紘、要潤、国仲涼子、古川雄大、月城かなと、大島蓉子、小柳ルミ子、村上弘明、中村雅俊、風吹ジュン
脚本:高橋美幸
演出:宝来忠昭、洞功二
演出・プロデューサー:三宅喜重
プロデューサー:河西秀幸、三方祐人、阿部優香子
音楽:菅野祐悟
主題歌:千葉雄喜 「幸せってなに?」 (Warner Music Japan)
制作協力:ジニアス
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/shumaku-rondo/
公式X(旧Twitter):@shumaku_rondo
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