『フェイクマミー』育児の“アウトソーシング”は正義か? 波瑠×川栄李奈が問う母親像

 正反対の人生を歩んできた薫(波瑠)と茉海恵(川栄李奈)が子どもの未来のために“ニセママ契約“を結ぶところから始まった『フェイクマミー』(TBS系)。薫は茉海恵の娘・いろは(池村碧彩)の母親になりすまし、名門私立・柳和学園の親子受験に臨む。いろはは見事合格となり、第2話からは偽親子による波乱の学園生活が幕を開けた。

 受験という大きな壁を突破した薫だが、ほっと一息つく間もなく次々と試練が降りかかる。最初の壁として立ちはだかるのは、“柳和の三羽烏”と呼ばれる保護者組織「柳和会」の役員ママたち。その中でもトップに君臨するのが、文部科学大臣の夫を持つ会長の玲香(野呂佳代)だ。「出演するドラマにハズレなし」と言われ、親しみのある雰囲気とナチュラルな演技で観る人に安心感を与えてきた野呂だが、今回は一味違う。近寄りがたいオーラを放ち、そのにこやかな笑顔で周りに圧をかける。

 そんな玲香から業務負担が大きい行事委員に任命されたのが、薫のママ友・さゆり(田中みな実)だった。有無を言わせない雰囲気に流されそうになるさゆりに、薫が手を差し伸べる。母親のなりすましがバレれば、合格取り消しどころか、刑罰に問われる可能性もあるため、薫はなるべく目立たずに学園生活を乗り切ろうと思っていた。

 だが、才能あるいろはの夢が夢が潰えるのを見過ごせず、自らニセママを買って出た彼女は元来、正義感の強い人間なのだろう。「こんな同調圧力、見過ごせません」と行事委員に名乗りを上げた薫。納得いかないことや疑問に感じることをスルーせず、きちんと抗う強さは時に周りとの軋轢を生むかもしれないが、そんな薫に救われる人はきっと大勢いるはずだ。

 一方、茉海恵も母親業をすべて薫に丸投げするのではなく、自分でできることは自分でやろうとしていた。そんな折、いろはが、茉海恵が手縫いした鍵盤ハーモニカのカバーを使わず、ネットでこっそり購入した市販のものを学校に持参していることが判明する。それはさゆりの息子にファスナーを壊されてしまい、茉海恵を気遣って自分で対処しようとしたいろはなりの優しさだった。

 しかし、茉海恵も茉海恵で常に一杯いっぱいなのだろう。仕事の合間を拭って手作りしたものを無下にされた気がして、いろはから事情を聞く前につい責めてしまった茉海恵から見えてくるのは、共働きで子どもを育てる大変さだ。身の回りの世話が必要な幼児期を乗り越えれば、楽になるかと思いきや、義務教育が始まるとさらに親のタスクが増える。学校関連の書類作成に、基本的な持ち物の準備、PTA活動、子どもの宿題の催促。それらの膨大なタスクを仕事と家事を両立しながら捌いていくなんて、まさに“無理ゲー”だ。

 そんなときにそばで話を聞き、必要とあらば手を貸してくれる薫のような存在がいたら、どんなに心強いか。「人に任せるからできることってたくさんあるんですよ」という薫の言葉通り、ハーモニカケースを直すだけでなく、きらきら光る装飾までプラスされたのは茉海恵の心に余裕が生まれたから。誰かと負担を分け合えば、そのぶん心に余裕が生まれ、また別の誰かを幸せにすることができる。本作で描かれる“母親業のアウトソーシング”はもしかしたら、今の社会に必要とされていることなのかもしれない。

 そんな希望を感じさせる薫と茉海恵の関係に、影を落とすのが3人の男の存在だ。偶然にも初恋の人・佐々木(中村蒼)と、いろはの母親と担任の教師として再会を果たした薫。佐々木は薫と過去に出会っていることには気づいていない様子だが、すでにいろはの母親として違和感を覚え始めている。茉海恵の右腕的な存在である竜馬(向井康二)は入試には父親役として力を貸したものの、違法な母親のなりすましには良い感情を抱いていない。そして最も不穏なオーラを醸し出すのは、笠松将演じる謎の男。茉海恵の執着心が見える彼は、現時点で全く情報のないいろはの父親なのだろうか。彼らが薫と茉海恵にとって味方となるか、敵となるかが今後の見どころとなっていきそうだ。

金曜ドラマ『フェイクマミー』

「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」第1回大賞作をドラマ化。正反対の人生を歩んできた2人の女性が、子どもの未来のために“母親のなりすまし”という禁断の契約を結ぶ。

■放送情報
金曜ドラマ『フェイクマミー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:波瑠、川栄李奈、向井康二(Snow Man)、中村蒼、野呂佳代、池村碧彩、橋本マナミ、中田クルミ、 津田篤宏(ダイアン)、筒井真理子、利重剛、若林時英、宮尾俊太郎、朝井大智、筧美和子、浅川梨奈、笠松将、田中みな実
脚本:園村三
演出:ジョンウンヒ、嶋田広野、宮﨑萌加
主題歌:ちゃんみな「i love you」(NO LABEL MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
プロデュース:韓哲、中西真央、唯野友歩
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/fakemommy_tbs/
公式X(旧Twitter):@fake_mommy_tbs
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