『奪い愛、真夏』シリーズ完結作に相応しいラストに 新ジャンル“タイムリープ不倫”を確立
『奪い愛、真夏』(テレビ朝日系)の最終回(第8話)を観て、綺麗な終わり方だと感じた。未来(高橋メアリージュン)風に言ってしまえば、「3・3・4・1」=「さみしい」感情を抱いたのも事実だが、鈴木おさむが脚本を務める『奪い愛』シリーズの完結作に相応しい幕の閉じ方だと、そう思える。
“タイムリープ不倫”という新たなジャンルを確立した『奪い愛、真夏』。真夏(松本まりか)と未来は自分が望んだ結末にするべく、タイムリープを行ってきた。全ては愛する時夢(安田顕)との時を刻むために。三子(水野美紀)が話していた「この時計、3回目を超えたら、あんたの未来そのものが削られる。代償がある」というのは、今作における最後の仕掛けだ。
第7話のラストで、未来が使ったタイムリープが4回目。その代償として、真夏への復讐心から咲川(かたせ梨乃)が“大切なもの”として時夢を襲撃し、それをかばった元也(白濱亜嵐)が刺され亡くなってしまう。この結末だけはダメだと、真夏は計5回目のタイムリープを初めて時夢以外に使い、元也が助かる未来を選ぶのだ。
真夏が代償として奪われるのは、聴覚。突発性難聴から両耳が聞こえなくなり、病院生活を余儀なくされるが、時夢の手紙に記されてあった「時はあなたとしか進まない」の文面に、真夏は時夢と一緒にこれからの時間を刻んでいくことを心に決める。
最終回で印象的なのは、セリフにインサートされた「覚悟」という言葉だ。真夏は未来との地獄のラストバトルの末、「私は、私の選んだ愛と時間で生きていくの」と高らかに宣言。時計の奪い合いから起こるビンタ合戦では、「あなたのビンタで首から上が吹き飛んでも私は負けない! 奪ったほうの覚悟もナメないで!」と力強い眼差しで未来を圧倒する。もう一つは「あの子の命を救えるのは、愛なんかじゃない。覚悟よ」という三子が時夢にかける言葉。「世の中の不正解を、自分だけの正解にして」という花火(森香澄)の名セリフが示すように、不倫とは道徳的に許されない不正解の行為であることは間違いない。しかし、そこに生まれる愛にどうしても抗えなくなることもある。それを正解にするためには、相当の覚悟が必要なのだ。