『あんぱん』“東海林”津田健次郎が再登場! 嵩とのぶへ託された“逆転しない正義”

 NHK連続テレビ小説『あんぱん』第119話は、なんとも懐かしい人物の再登場から始まった。

 柳井家を訪ねてきたのは、かつて嵩(北村匠海)の人生に深く関わった東海林(津田健次郎)。久々の登場に、のぶ(今田美桜)は心からの笑顔で迎える。かつてと変わらぬ人懐っこさを見せながらも、髪には白いものが混じり、わずかに老けた印象を漂わせていた。

 それでも元気そうに見える東海林は、高知新報を退職し、今は自由奔放に生きているらしい。嵩の活躍を耳にして嬉しそうに語る姿からは、彼らしいおおらかさが感じられた。大地震の時にものんびり寝ていたこと、そしてどこか憎めない“お人よし”なところなど、のぶと自然と懐かしい思い出話に花を咲かせていく。「あの柳井がこんな活躍をするとはな」と口にした東海林の言葉には、かつて新人記者と向き合った彼の誇らしさと、長い歳月を経た深い感慨が込められていたように思えた。

 一方その頃、嵩は浮かない顔で投稿作品を整理していた。八木(妻夫木聡)や仲間たちの前で彼が吐露したのは、『アンパンマン』がなぜ人気を得られないのかという悩みだった。八木は「テーマは分かるが、何かが足りない」と指摘し、それをきっかけに仲間たちもそれぞれアンパンマンの欠点を口にしていく。しかし嵩は譲らない。「カッコよくても、強くなっても良くない」と。ヒーロー像に対するこだわりは揺るがなかった。

 そんな中で、東海林はあんぱんまんにこそ腑に落ちないものを感じていた。なぜ嵩は、ボロボロのマントを身にまとい、決してカッコよくは見えないヒーローを描いたのか。問いかけに対して、のぶが語ったのは「カッコよく敵と戦うことが真のヒーローではない」ということ。自分を顧みず、弱い人や困っている人を助けることこそが真のヒーローであり、だからこそ見た目がカッコ悪くても、力が弱くても構わない。『アンパンマン』は、嵩にとって唯一信じることのできた正義の味方だった。

 東海林はその言葉を聞き、若き日の記憶を呼び起こす。まだ嵩とのぶが面接を受けにやってきた時、「逆転しない正義」について語っていたあの瞬間だ。時を経ても変わらない二人の信念を目の当たりにし、東海林の胸には深い思いが込み上げてきた。

 やがて、のぶからの電話で東海林が訪ねていることを知った嵩は、慌てて帰宅する。久しぶりに顔を合わせた二人に、東海林は静かに言葉を残した。

「おまいらが長い時間かけて見つけたもんは、まちがっちゃあせん」

 その一言には、記者として積み重ねてきた年月から生まれた確信と、二人への揺るぎない信頼が込められていた。言葉を託すと、東海林は穏やかな笑みを浮かべ、そのまま背を向けて歩み去っていく。その後ろ姿はかつてのような威勢は感じられなかったが、どこか懐かしかった。

 第119話は、かつての恩人との再会を通じて、嵩やのぶが貫いてきた“正義”の意味を改めて問い直す回となった。派手さも力強さもなくても、人を助ける存在であることに価値があるという信念は、『アンパンマン』という存在に結実し、やがて多くの人の心を動かす力となっていく。東海林が残した言葉は、二人にとって過去と現在をつなぐ道しるべであり、未来を照らす確かな光となったはずだ。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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