及川光博はなぜ20年もの間連ドラ主演を演じてこなかったのか 稀代の性格俳優としての魅力

 10月からスタートする新ドラマ『ぼくたちん家』(日本テレビ系)にて、及川光博が主演を務めることが明かされた。見かけない日はないほどのバイプレイヤーにして日本のエンターテインメント界の中心人物だといえる及川だが、連続ドラマでの主演は21年ぶりのことであり、ゴールデン・プライムタイムでの主演はこれが初。30年近いキャリアを持つ彼は、いったいどのような“主演俳優像”で魅せてくれるのだろうか。

及川光博、GP帯初&21年ぶりの連続ドラマ主演 10月期『ぼくたちん家』で心優しきゲイ役に

及川光博が主演を務める連続ドラマ『ぼくたちん家』が、10月期の日本テレビ系日曜ドラマ枠で放送されることが決定。及川にとって21年…

 『ぼくたちん家』は、『野ブタ。をプロデュース』(2005年)や『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(2006年)、近年だと『だが、情熱はある』(2023年)といった日本テレビ製作のドラマ、さらには『メタモルフォーゼの縁側』(2022年)などの映画作品を生み出してきた河野英裕がプロデューサーを務め、「日テレ シナリオライターコンテスト 2023」で審査員特別賞を受賞した松本優紀が脚本を手がけるオリジナルドラマだ。“社会のすみっこ”に追いやられた者たちが愛と自由と居場所を求めて、明るくたくましく生きる姿を描いていくものなのだという。

 そんな作品で及川が演じる主人公・波多野玄一は、ちょっと不器用で、やたらと情に厚い人物らしい。心優しいゲイである彼が、恋愛にも人生にも冷めた態度を示す青年・作田索と出会い、恋に落ちるところから物語は動き出していく。そしてなぜか玄一は彼への愛の告白の機会において、ふたりの名義で家を購入しないかと不思議な提案を持ちかける。家をふたりの“かすがい”にしようというのだ。なかなかユニークな設定。しかもそこへ15歳の少女・楠ほたるが現れ、「私、あなたを買います。3000万円で。中学卒業までの半年間、親のフリしてください」と驚くべきセリフを口にする。さまざまなドラマに触れてきた者であっても、非常に期待感の高まる設定だろう。

 及川がGP帯のドラマで主演を務めるのは本作が初だと先述したが、この事実にドラマファンは意外性を感じるだろうか。どうだろうか。

 準主役級のポジションで参加した『相棒』(テレビ朝日系)をはじめ、彼の代表作は数知れず。今年の作品だと『御上先生』(TBS系)で演じた塚田幸村や『イグナイト -法の無法者-』(TBS系)の桐石拓磨がそうであったように、どことなく(ときにはあからさまに)うさんくささの漂うキャラクターを演じたらピカイチだ。しかもこの手の役どころはいずれも視聴者の記憶に深く刻まれる。そして、こういったクセのあるキャラクターたちの存在は、場合によっては主人公よりも強く印象に残ったりするものだ。

 だから『ぼくたちん家』で満を持してGP帯のドラマで初主演を飾ると知って、「意外だ」と思ういっぽう、この意外性について納得していたりもする。さまざまなタイプの膨大な数の作品に、及川は自身の個性と演技を刻み込んできた。そう、彼こそ稀代の性格俳優だといえる存在なのだから。

 2004年に放送された『ミステリー民俗学者 八雲樹』(テレビ朝日系)から21年ぶりに主演を務めることとなった本作では、“ミッチー”の愛称で親しまれる俳優・及川光博の新たな一面が見られることになるに違いない。数々の人気作・話題作を世に送り出してきたプロデューサーと気鋭脚本家のかけ算から生まれる物語や波多野玄一というキャラクターは、まだ開かれていなかった及川の演技の引き出しを開く契機となる可能性に満ちているし、ユニークな設定の中で玄一と交流する作田索や楠ほたるを誰が演じるのかでも変わってくる。いつもであれば及川は主人公に影響を与える側だが、今回は影響を受ける側だ。

 この作品で及川が立ち上げる“主演俳優像”は、私たちがまだ見たことのないものかもしれない。いや、そうに違いない。

■放送情報
『ぼくたちん家』
日本テレビ系にて、10月スタート 毎週日曜22:30〜放送
出演:及川光博ほか
脚本:松本優紀
演出:鯨岡弘識、北川瞳
インクルーシブプロデューサー:白川大介
チーフプロデューサー:松本京子
プロデューサー:河野英裕、西紀州、岡宅真由美
音楽:東川亜希子、神谷洵平
制作協力:AX-ON
©日本テレビ

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