『べらぼう』視聴者への“ご褒美”爆笑回 役者陣の“ムダ遣い”が詰まった最高の仇討ちに

 人生には自らの命を投げ出すよりも辛い思いをしながら、それでも生き続けなければならない場面がある。きっと愛する意知(宮沢氷魚)を失って、誰袖(福原遥)も、意次(渡辺謙)も、苦しくて、辛くて、もう二度と笑えないのではないか……そう思っていたかもしれない。

 意知が生きていたら失われなかったはずの笑顔を取り戻したい。そのために刀ではなく、筆を振るう。それが蔦重にできる“仇討ち”だった。「おかしい」と思わず吹き出した誰袖。そして「粋な敵を討ちやがって」と口角を上げた意次。彼らの笑顔に、私たち視聴者も救われる思いだった。

 天災が続き、米が不足した天明の時代。誰かを責めなければやりきれない、苦しくなるばかりの生活。そんな笑えない世の中を笑えるようにするのが、蔦重の見せた心意気。そして、『べらぼう』が令和の世に見せたかったものなのだろう。

 誰かを笑わせるために。悲しみや苦しみの中でも、ひとときの救いを届けるために。『べらぼう』というドラマを作るキャストや制作陣にも、蔦重と同じく優しさを感じた。「大河ドラマのムダ遣い」と言いたくなるほどに、贅沢で、華麗で、笑える粋な「仇討ち」に拍手を送りたい。

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

関連記事