『あんぱん』北村匠海と木村優来が重なる朝ドラの醍醐味 のぶと嵩の“節目”の水曜日に

 『あんぱん』(NHK総合)第17話で、ついにぶつかり合った嵩(北村匠海)と千尋(中沢元紀)。第17話の喧嘩を緊張と捉えれば、第18話では緩和の部分として、寛(竹野内豊)を含めた兄弟の対話が描かれた。

 兄弟喧嘩を止めるために、嵩を殴ったのぶ(今田美桜)。羽多子(江口のりこ)は、「なんてことをしたんだ」と怒っているが、のぶ本人はまったく意に介さず試験対策として裁縫の練習をしている。メイコ(原菜乃華)は、柳井兄弟の喧嘩を止めたことを知り、のぶと千尋との仲を疑う。それにくら(浅田美代子)も便乗。千尋は、すらっとしたカッコいい男子として街の人に認識されているのだろう。勉強も運動もできて、見た目もカッコいい千尋に対して嵩が抱いている鬱屈とした感情の重さを、改めて実感した。

 柳井家では、怪我をした千尋が寛に手当をされていた。嵩と千尋、さらに登美子(松嶋菜々子)と千代子(戸田菜穂)のバトルも巻き込んだ柳井医院の後継ぎ問題は、寛の「後継ぎはいらん」という一言で終止符が打たれる。嵩が立ち聞きしていた「千尋は嵩のために医者を目指すのをやめたのではないか」という寛と千尋の会話には続きがあった。千尋は、嵩のために医者を目指すのをやめたのではなく、心の底から法律家として弱い者を救いたいと考え、法の道に進むことを選んだのだ。そして、千尋から明かされたのは、血が苦手だというかわいらしい秘密。完璧で嫉妬の対象であった千尋にも苦手なものがあるという事実が、嵩の心をほぐしていく。

 何を目指すべきか分からない嵩は、それでも高知第一高等学校を目指したいと宣言。その理由は、登美子の喜ぶ顔が見たいから。幼い頃に、登美子にされた仕打ちを恨むことができず、母が誇れる息子でいたいという嵩の思い。それを吐露する北村匠海の表情に、嵩の幼少期を演じた木村優来の哀愁漂う表情が重なった。キャストが変わったとしても、積み上げられた時間と経験を感じさせてくれるのは、朝ドラの醍醐味だろう。

 そんな嵩の気持ちを否定せず、寛は再び「何のために生まれて、何をしながら生きるのか」という言葉を送る。それを見つけるためにはもがくしかない。「もがけ、必死にもがけ」という言葉に後押しされ、嵩は真剣に勉強に取り組むようになる。言わずもがな「何のために生まれて、何をしながら生きるのか」は、「アンパンマンのマーチ」の歌詞を思わせるセリフ。壁にぶつかりながら自分というものを探し続けた嵩の心に、このセリフは深く刻まれることになる。まずは選択肢を増やすために、高知第一高等学校へ。嵩のもがきが始まった。

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