“インド版ビリー・エリオット”の実話 限界を感じたら『コール・ミー・ダンサー』を観よう

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、たまに踊る花沢が『コール・ミー・ダンサー』をプッシュします。

『コール・ミー・ダンサー』

 「新しいことを始めるのに、年齢なんて関係ない」。そう信じて30年近く生きてきたのに、今年初めてその信念が揺らぐ出来事が起きました。夏にふとダンスを習ってみようと思い立ち、体験レッスンを受けたときのことです。ダンススクールを訪ねると、想像していたよりも少人数のクラスで、受講生は自分のほかに1人。しかも小学5年生の女の子でした。

 11歳の大先輩はフリを覚えるのも早く、先生のお手本を見るなり、どんどん完コピしていきます。一方の自分はというと、まず動きが覚えられない。覚えても端から抜けていく。さらに踊れているつもりでも、鏡を見るとなんだか動きがモッサリしている……。自分があきらかにこのクラスの足を引っ張っているという感覚にショックを受けてしまいました。

 これまで初めてのことに挑戦する瞬間はいつも楽しくて、それは自分が「向いていない」のか、はたまた「やればできる」のかを確かめるのが面白かったのに、そこに第3の可能性として「今からでは無理」が加わってしまった。レッスンの初日に上手く踊れないのなんて当たり前だと自分を慰めつつも、努力や才能以前に年齢的な壁があるのではないかという疑念が拭えませんでした。

 そんな悩める筆者が出会った作品が、『コール・ミー・ダンサー』です。本作はドキュメンタリー映画で、ダンサーを目指すインドの青年・マニーシュのドラマチックな半生が描かれています。マニーシュは決して豊かではない家庭の生まれで、ダンスも独学ではあるものの、努力家でバク転などのアクロバティックな技を次々と習得。そしてある日、名門ダンススクールのアメリカ人講師に見出され、バレエと出会うことになるのです。

 インドとダンスといえば、近年ブームになった『RRR』や『バーフバリ』のようなボリウッド映画がまず浮かぶ方も多いのではないでしょうか。実際、この映画でもインド国内ではボリウッドや民族舞踊が主流で、バレエの地位はまだまだ低いことが描かれています。

 また、インドには日常的に踊る風習があるものの、ダンスを仕事にするという発想はないようで、マニーシュも非凡な才能を持ちながら、なかなか給料の出る仕事に巡り会えません。そんなインド独特のダンス観を知れるのも本作の面白いところです。

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