斉藤陽一郎、父親にとっての青春は「家族と過ごす時間」 『ミライヘキミト。』監督と語り合う

斉藤陽一郎とウエダアツシが考えた、「お父さんは野球で例えると?」の答え

――“お父さん”にとっての「青春」とは?

斉藤:たぶん、家族と過ごす時間ですよね。大きくなっても子供は子供だし、 娘は娘だし、奥さんはかわいいし。ニコニコしながらみんなを見守ってるっていう……おばあちゃんのような視線に近いかもしれないですね(笑)。

斉藤陽一郎

――本作を観ていて、いち男性視聴者としては“理想のお父さん像”を考えさせられたのですが、ウエダ監督は脚本の段階でどのような存在として書いたのでしょうか?

ウエダ:俊夫は女性たちの中で男性1人という立ち位置なので、正直脚本の段階ではどういう感じになっていくのか分からない部分も多かったです。主人公ではないため、細かく描写をしているわけでもなかったので、演じてもらわないと見えてこないかなと。なので食卓でのシーンを撮るたびに、どんどんお父さんが“だめな人”というか、いじられキャラみたいな感じに仕上がっていく様子をなるほどと思いながら観ていました。そういうバランスだからこそ、女性たちが生き生きしている家族になっているんだなと思わせてくれた斉藤陽一郎さんの佇まいはさすがだなと思いました。

斉藤:いやいや、他の方だったらまた違うお父さんになっていたかもしれないですし。ただ、台本読んだ時点でこういう風になっていくだろうな、というバイアスは絶対にかかりました。僕らは突然会って、いきなり芝居を始めてますけれど、演じる役には“その前の時間”が必ずあります。それは彼女たちが小さい頃から付き合ってきた距離感であるとか、そこで生じる共通言語などがある中で出来上がっていく関係性であり、本作では反抗期とかも多分終わって、受け入れてくれてるぐらいの時期ですよね。だから子供時代の仲のいい感じに戻ったというか、お父さんはお父さんだからしょうがないよね、みたいな受け入れられ方をした感じとなると、こういう芝居になるんじゃないかな、という感覚でした。

――個人的にまさにひとつの家族の在り方として、理想を体現しているように思いました。一方で、お父さんが家族の悩みに対しては直接的に関与することはあまりなかったように感じたのですが、それは意図的なものだったのでしょうか?

ウエダ:意図的といえば意図的ですね。それぞれがそれぞれの悩みに対峙してほしいので。そう考えると、悩みを解決するのはお父さんの役割ではないと考えました。

斉藤:そうそう、お父さんの出番ではない気がする。

ウエダ:お父さんは見守ることしかできないんじゃないかなと思うんですよね。背中を押すとか、応援するとかっていうことは、その後のことで。悩みに対峙して一歩を踏み出すのは、やっぱり自分自身が決めることだと思います。もちろん周囲のサポートは大事ですが、お父さんは分かっていても1歩引いて家族を見ているんじゃないか、というイメージで書きました。

斉藤:第1話で、「家族の連携プレーが……」というナレーションの中でシラス丼を作ったシーンがありました。その中で「お父さんは野球で例えるとなんだろう」って言っていて、その「なんだろう」に対しては監督からも答えが出てないのですが、僕はグラウンドキーパーのようなものではないかと思っていて。

ウエダ:なるほど。

斉藤:プレーをするための地面をならす、そういうポジションなのかなとふと思ったりしました。ピッチャーマウンドをちょっと盛り上げたりとかね。第3話で土いじりもするしね(笑)。

斉藤陽一郎

――逆に言えば、プレイヤーでなくともそういう関わり方でもいいというか。

斉藤:そういう関わり方でいいと思います。まさに由宇は男でも女でもなく、選手でもマネージャーでもなく、今までやりたいことをやってきた。そこには性差もないし立場の違いもない。だから僕は僕の野球をやっているっていう、そういう感じじゃないかな。

――最後に、今回マイナビでは50周年を記念して「未来が見える世界を作る。」というメッセージが打ち出されています。そこで、映画監督と俳優という立場から見て、映画業界の未来についての考えを聞かせてください。

ウエダ:まず伝統は伝統として引き継ぎながら、新しい考え方や、今の時代にあった仕事の仕方など、そういうことはどんどん取り入れていくべきだと思います。今は映画やテレビ、そして配信も含めてたくさん撮影が行われていて、スタッフもすごく足りていない状態なんです。映画をやりたいという人がどんどんと出てこないと、業界として衰退していってしまうわけで。だから改善するところは改善して、魅力的な作品を作り続けて、そして新しい人が出てくる……という循環ができる業界になっていけば。もちろん皆さんすでにそれを目指してやっていると思いますし、僕みたいな端っこの人間が改めて言うことでもないですが、みんながハッピーで面白い作品がどんどん出てくるようになることが1番ですね。

斉藤:そして同時に“観る”ということを、我々も含めてみんながしなければなと。映画館離れとか言われていることなども含めて、作品を観る。それが何より大事なことだと、僕は思っています。

[公式] オリジナルWEB映画『ミライヘキミト。』episode1 由宇と晃介|マイナビ50周年記念 オリジナルWEB映画
[公式] オリジナルWEB映画『ミライヘキミト。』episode2 咲季と慎|マイナビ50周年記念 オリジナルWEB映画

■配信情報
『ミライヘキミト。』
公式YouTubeチャンネルにて配信中
出演:川島鈴遥 、平祐奈、西田尚美 、斉藤陽一郎、福山翔大 、福松凜 、カトウシンスケ、浅田美代子
脚本・監督:ウエダアツシ
エンディング・テーマ:スピッツ「青い車」(Polydor Records)
原案:矢島弘一
プロデューサー:甲斐真樹
音楽プロデューサー:田井モトヨシ
アソシエイトプロデューサー:東島真一郎、白川直人
制作プロダクション:スタイルジャム
企画:マイナビ
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