『虎に翼』伊藤沙莉&岡田将生の恋は成就するか イマジナリーではない優三の言葉の重み
『虎に翼』(NHK総合)第94話は、寅子(伊藤沙莉)の再婚に向けて外堀が埋められる展開となった。
帰宅した寅子を待っていたのは花江(森田智望)だった。直明(三山凌輝)に促され、へそくりで切符を買って新潟に来たのだった。花江を赤ん坊の頃から世話してきた稲(田中真弓)は再会を喜ぶ。夕食の席で会話ははずみ、人気教師になった直明やジャズをやるために新聞配達を頑張る直治(楠楓馬)の近況が語られた。寅子による直道(上川周作)の口まねや、「稲、歌います」からの唱歌「砂山」が飛び出すなど、おおいに盛り上がった。
その頃、喫茶「Lighthouse」では航一(岡田将生)が夕食を取っていた。プレートに乗った料理を黙々と口に運ぶ航一に、涼子(桜井ユキ)が声をかける。「トラコちゃんは昔からお気立てはよろしいけれど、全方位に愛がおありで、恋愛ごとの機微のようなことには無頓着ですの。ですから後悔なさらぬように」と、涼子にしては直接的な言い回しで助言した。
食事のあと二人きりになった花江は、寅子に本題を切り出す。それは寅子の恋愛に関することで、「いい人」とぼかされているが相手は航一以外考えられない。優未(竹澤咲子)からの手紙で、花江は寅子と親しくする男性の存在を聞き知っていた。優未は、母が自分のせいで再婚しないことを心配し、花江に手紙で相談したのだった。これまではイマジナリー花江のお小言で十分効果があったのが、リアル花江の登板はよほどの一大事と思わせる。
親友に直接問いただされ、黙るしかない寅子を救ったのは優未だった。正確には優未が持ってきた優三(仲野太賀)のお守りだった。中を開けるように促されて見ると、優三の手紙が入っていた。優三は、自分がいなくなったときのことを考えて手紙を残していた。
「僕の望みは前に話したけれど、もう一つだけ望みを増やしてもいいですか。弱音を吐くことができる人、正しくないトラちゃんも好きでいてくれる人を見つけてください。できれば心から恋して愛する人を見つけてください」
優三は寅子の幸福を願っている。寅子の弱さや一人で抱えてしまうところを理解し、自分がいなくなった後も、寅子が寅子らしく笑顔でいられるようにとの意図は明白だ。だから、寅子と優未が本音を言えずスンッとしてしまったり、束縛される相手ではいけない、心底愛してくれる人以外はダメと付言したと思われる。