【ネタバレあり】『デッドプール&ウルヴァリン』は“ファン待望”の快作に 夢の共闘も実現

 こんにちは、杉山すぴ豊です。ここ最近のマーベル、DCのアメコミヒーロー映画まわりのニュースや気になった噂をセレクト、解説付きでお届けします! 今回は7月24日に世界最速公開となった『デッドプール&ウルヴァリン』のレビューです。(なお今回は、前半が「なぜ本作がファン待望の作品なのか?」についてのコラム、後半がネタバレありのレビューとなっています。後半は映画をご覧になった後にお読みください)

なぜ本作が“ファン待望の作品”なのか?

 ファンが待っていた! これほどこの言葉が似合う映画は久しぶりです。マーベル映画ファン待望の『デッドプール&ウルヴァリン』がついに公開されました。そしてその期待に十分応えてくれる快作です! 本作はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作であると同時に、久しぶりのX-MEN映画でもあり、なによりも新生ウルヴァリン映画であり、デッドプールの新たなる旅立ちを描いています。

 つまり本作の大きな特徴はMCUであり、X-MEN映画ということ。これはどういうことか? いわゆるMCUは、2008年の『アイアンマン』映画を起点にスタートしました。しかし、それに先立つ2000年に『X-MEN』(ちなみに日本公開時は『X-メン』と“メン”表記)が公開され、2006年にかけて3作が公開されました。実はマーベルはMCUを立ち上げる前に、20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)という映画会社にX-MENの映画化権を渡していました。したがって、MCUの前に“20世紀”版のX-MEN映画が続々とリリース。ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンはこのときからスクリーンで活躍しているわけです。MCUが始まって以降も、X-MEN映画は次々と作られました。

 そして、デッドプールも元々、X-MEN系のコミックでデビューしましたから、X-MEN映画のバリエーションの1つとして、ライアン・レイノルズ主演で映画版『デッドプール』が2作作られました。しかし、MCUはディズニー、X-MENは20世紀フォックスと映画会社が違うため、コミックのほうではアベンジャーズとX-MENが共演(ないし対立し、戦うこともある)しても、映画の方ではクロスすることはなかったわけです。

 ところが、ここで大きな転機が訪れます。20世紀フォックスがディズニー傘下になったのです。これによりX-MENの映画化権自体がマーベルに戻り、MCUとしてX-MEN映画が作れるようになりました。というわけで、その本格的第1弾が『デッドプール&ウルヴァリン』というわけです。「本格的」という言い方をしたのは、すでに映画『X-MEN』シリーズのプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)が『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』に、ビースト(ケルシー・グラマー)が『マーベルズ』にカメオ出演しているから。

 しかし今回は、20世紀版の重要キャラ2人が主役なわけです。したがって本作には過去のX-MEN映画に登場したキャラが多数出てきます。とはいえ、そもそもMCUと20世紀版X-MENという違う映画の世界を一つにするのはかなり無理があるのでは? と思いきや、ここでマルチバースという設定が生きてきます。

 「マルチバース」はパラレルワールド(並行世界)みたいな概念で、昨今のMCUにおける重要ワード。そして、MCUと今まで作られてきた20世紀版X-MEN映画の世界は、マルチバースの関係だったと説明されます。なので、デッドプールたちが時空を超えて2つの世界を混ぜ合わせてしまうわけですね。

 また、そもそも20世紀版のX-MEN映画自体が『X-MEN:フューチャー&パスト』でタイムトラベルによって歴史を変え、時間軸を分岐させたり、『デッドプール2』ではデッドプール自体がタイムトラベルして、さまざまな時空を旅しているということが描かれています。したがって、X-MEN映画のほうがマルチバース的な展開を早くから取り入れていたともいえます。

 加えて、今回の『デッドプール&ウルヴァリン』では、MCUのマルチバースを監視するTVA(時間変異取締局。ドラマシリーズ『ロキ』に登場)が絡んできます。つまり、“20世紀”版でマルチバースをお騒がせしていたデッドプールとMCU側のマルチバースの管理人TVAをつなげることで、両世界をスムーズにつなげることに成功しました。

 さて本作は、タイトルが示すようにウルヴァリンの映画でもあります。ウルヴァリンことローガンは『LOGAN/ローガン』で壮絶なフィナーレを迎えたはずですが、なぜ今回復活できたのか? ここもマルチバースの発想です。要はマルチバースの数だけその世界独自のウルヴァリンがいるわけで、今回登場する彼は今まで20世紀版に登場したキャラとは別人なのです。その証拠に黄色いコスチュームを着ています。この服はコミックでのウルヴァリンスーツを再現していますが、20世紀版の映画ではこの格好で登場したことがないのです。ファンからすれば『LOGAN/ローガン』が素晴らしかったから、安易にウルヴァリンに生き返ってほしくはない、けれどヒュー・ジャックマンのウルヴァリンをもう一度観たい。こういう矛盾した願いを上手い形で叶えてくれたわけですね。なお、本作ではファンのそうした『LOGAN/ローガン』への思いにまず先手を打ってデッドプールがコメントします。このあたりのセンス、さすがです!(笑)

 そしてファンの気持ちに応えてくれたと言えば、ライアン・レイノルズとヒュー・ジャックマンを続投させたことでしょうか? MCUとしては今までのキャスト、スタッフを一新することもできました。しかしこの2人の姿をもう一度スクリーンで観たい。それぐらいハマり役だったわけですから。そして、本作はMCU初のR指定映画として作られました。デッドプール映画は、過去2作ともR指定映画でした。どぎつい会話と血まみれのバイオレンス、超過激なブラックコメディ的な要素、これがデッドプール映画の魅力。でも、さすがにMCU、つまりディズニー傘下になったらR指定は無理だろうと思っていた方もいたでしょう。ところが、まさかのR指定! 過去2作の勢いを失うことなく3度デッドプールが暴れてくれます。

 特に、デッドプールもウルヴァリンも刀や爪で相手をぶった斬りますから、『デッドプール&ウルヴァリン』はいろいろな意味でアメコミ映画ファンの夢をストレートに叶えてくれた映画に仕上がっていました。

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