ウィ・ハジュンの出世作『イカゲーム』

　ウィ・ハジュンの名を世に知らしめたといっていい『イカゲーム』は、外すことができない作品だろう。失踪した兄の行方を追う警察官・ジュノを演じ、ゲームの参加者ではなく運営スタッフ29番として組織に紛れ込む。

　イ・ジョンジェが演じるギフンらが緊迫したゲームに参加しているのと同時進行で、ジュノが組織の核心に迫っていく姿が描かれる。正体がいつバレるかハラハラしながら見守ることになり、冷静沈着に真実を突き詰めていく姿にくぎ付けになった。ゲームを行う現場の証拠と失踪した兄の情報を手にしたジュノは、脱出を試みる。

　冷静なジュノが唯一動揺したのが、失踪した兄と衝撃的な対面をした時だ。その瞬間のなんともいえず悲しく絶望的な表情のウィ・ハジュンに役者魂を見た気がした。無人島の崖の上で追い詰められ、銃で撃たれたジュノは海に落ちてしまった。もはやこれまでか……と思ったが、シーズン2への出演が決定しているところをみると生き延びたのだろうか？　再びゲームに参加するであろう、ギフンの味方として再登場するのか。いずれにしてもシーズン2の配信が待ち遠しい。

『最悪の悪』で犯罪組織のカリスマリーダーを熱演

　映画『新しき世界』の制作陣が手掛け、チ・チャンウクが犯罪組織に潜入捜査する刑事・ジュンモを演じたことで話題の『最悪の悪』。ウィ・ハジュンは、江南を取り仕切る犯罪組織のカリスマリーダー・ギチョルを演じている。

　ノワール・クライムアクション・ドラマと謳っているだけあって、第1話から血が飛び散る乱闘シーンが盛りだくさんだ。過激なシーンは苦手な筆者だが、第1話からぐいぐい引き込まれていった。理由としては、ウィ・ハジュンが江南で人気のDJから江南を取り仕切る大物に成り上がっていく様をテンポよく描いているからだ。

　金を稼ぎたいとギャングの頭に直談判をするほど根性のあるギチョルが、なかなかチャンスを与えてくれないギャングのボスに反旗を翻す。その乱闘シーンが迫力満点で、大勢を引き連れて先頭を闊歩するウィ・ハジュンがとにかくカッコいい。悪人だと分かっているけれど、ギチョルは冷血人間ではなく義理と人情がある人物なので、共感してしまう部分が多い。ダークな役もそつなくこなすウィ・ハジュンに、この作品で新たな魅力を見出した人もいるだろう。そして同時に恋愛要素も見せているため、ファンにとっては1つの作品で2度おいしいのではないだろうか。

　物語が進むにつれ、ジュンモとジュンモの妻・ウィジョン（イム・セミ）、ギチョルの3人の関係が複雑になっていき、どういう結末を迎えるのか視聴者は翻弄される。胸をえぐられるようなエンディングだが、本作がウィ・ハジュンの代表作になることは間違いないだろう。
　
■配信情報
『卒業』
U-NEXTにて配信中
演出：アン・パンソク
脚本：パク・ギョンファ
出演：チョン・リョウォン、ウィ・ハジュン、ソ・ジュヨン
©STUDIO DRAGON CORPORATION