『下剋上球児』“本物”の野球シーンをいかに構築? 撮影担当に聞く球児たちとの裏側
南雲(鈴木亮平)が監督として復帰し、日本一の下剋上に向けて快進撃を続ける越山高校野球部の姿が頼もしくなってきたTBS日曜劇場『下剋上球児』。“本物”の野球シーンが詰まった本作において、大きな役割を担っているのが撮影チームだ。その中心を担っているのが、『最愛』(TBS系)、『MIU404』(TBS系)でも塚原あゆ子監督×新井順子プロデューサーとタッグを組んでいた関毅。撮影担当として、本作ではどんな試みに挑んだのか話を聞いた。
“カメラを構えています!”という雰囲気にならないように
――今回は野球をテーマにした物語です。撮影にあたり準備したこと、こだわっていることを教えてください。
関毅(以下、関):僕は『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014年/TBS系)を担当していたので、野球というテーマに対して特に準備することはありませんでした。撮り方でいうと、塚原(あゆ子)監督とはもう10年くらい一緒にやっていますが、毎回毎回、「なにか新しいことができないか」と言われるんです。今回は「久我原(橘優輝)と並走したい」というところから始まり、素早く準備できる撮影法を探しました。久我原は50mを6秒で走るんですよ。その速さに追いつける特機を球場には用意できないので、「ワイヤーカムを使ったらどうですか?」と提案しました。そこから、「ワイヤーカムでもっとこういう映像は撮れないか」とどんどん広がって、画並びのアクセントになったのではないかと思います。あとはピッチャーが投げたり、バッターが打ったりするのを野球中継と同じようにスーパースロー用のカメラで撮影し、プレイの迫力を出していくことにこだわりました。
――現場で、塚原監督とお話しながら作り上げていくイメージですか?
関:塚原さんと演者が、セッションする感じで作品を作っていくんです。演者から「こうしたい」と言われたことを塚原さんが受けたり、塚原さんご自身が「こうしてみたい」ということを話しながら進めていく。なので、カット割は一応ありますが、その場で流動的に変わっていくというか。演者がお芝居しづらくないように、感情を入れやすいように進めていくのが、塚原組の特長だと思います。
――関さんの中でも事前にアングルを決めすぎず、現場で対応していると。
関:基本はそうですね。でも、塚原さんの中に「どうしてもこの画が欲しい」と狙いがある映像については、事前に監督と話し合っています。お芝居の立ち位置などを調整しなければいけないので、その画が成立するためにはどうしたらいいかを考えて、こちらから提案するかたちで進めています。
――現場で撮り方を判断するとなると、瞬発力が必要ですね。
関:瞬発力は高いと思います。プロデューサーの新井(順子)さんもそうですが、現場の動きや視聴者の要求にも敏感に反応する、瞬発力が必要なチームだと思います。
――キャストのみなさんとは、どのようなお話を?
関:キャストのみなさんとは、あまり堅い話はせずに世間話がメインです。今回は三重に長く行っていたので、「どこに何を食べに行った」とか(笑)。お互いに気を使わない空気感というか、“カメラを構えています!”という雰囲気にならないようにしています。
――球児のみなさんがカメラを構えると硬くなってしまうということで、あえて離れて撮ることもあったと伺いました。
関:クランクインしたばかりの時はお芝居経験の浅い演者が多かったので、距離をとって撮ることもしました。被写体との距離感にはこだわるほうで、今回は物語を進めていく上で「客観的に攻めていこう」と監督とも話していたので、ちょっと遠い位置に構えることが多かったです。三重の自然を描くにもカメラは遠い方が良かったです。逆に、グッと感情がこもるような芝居のときには近づいて、強弱を出すように心がけています。
――球児を撮影する上で、「これはいい表情だ」と感じるようなことはありましたか?
関:いや、これは1人を選ぶと球児たちに怒られちゃうので(笑)。でも、みんな自分の見せ場のシーンではそれぞれにいい顔をしていたと思います。エピソードとしては、第6話を撮っているときに、楡(生田俊平)に「初めてカメラを意識しちゃいました」と言われました。いつも通り撮っていたんですが、「関さんが撮っていることを意識して、なんかドキドキしちゃった」と(笑)。ふだん、そうやって何も感じさせずに撮れていることが、自分にとっては“ちゃんとやれている”ということなので、良かったのかなと思っています。
――カメラマンとして、球児たちの良さを引き出そうという意識はありますか?
関:それはないですね。引き出すのは監督のお仕事なので、引き出されたものを、より良くしていくという感じです。