『呪術廻戦』津田健次郎の容赦ない“怒り”が見事 七海建人の圧倒的な強者としての威圧感

「ただひたすらにこの現実を突きつけてくる諸悪をただひたすらに」

 重面春太の奇襲を受けて致命傷を負っていた伊地知潔高。倒れている伊地知を見つけて七海建人が言い放った「ナメやがって」の一言は憎しみを纏っていた。七海という男はポーカーフェイスであり、今何を考えているのか、表情からは一切読み取れない。無愛想と言ってしまえばそうなのだが、実は情に厚い一面もあり、仲間を誰よりも大切に思っている。

 思い返してみると、虎杖悠仁に対しては一切呪術師として認めてはいなかったが、「渋谷事変」では虎杖から「ナナミン」と呼ばれていてもまんざらでもない表情を見せるなど、一度認めた相手に対しては敬意を払っていた。『呪術廻戦』第36話「鈍刀」では1級術師である七海の真の強さが垣間見えた。

 釘崎野薔薇から伊地知が奇襲されたことを伝えられた禪院真希は、釘崎と新田明に伊地知のもとへ向かうことを命ずる。だが、その途中には重面が待ち受けていた。重面は交流会編では真人らとともに交流会に潜入し、釘崎とも戦闘はしていないものの相対していた。そこで釘崎は新田に急いで伊地知のもとへ向かうように裏抜けを指示するが、すぐに察知した重面に新田はアキレス腱を切られてしまう。

 重面は人間を痛めつけてはそれを快感に思い楽しんでいるサイコパスな呪詛師だ。釘崎は怒りのままに攻撃をしかけるが、重面には届かない。「簪」で天井を爆破させて重面に命中させたものの、一瞬の隙を突かれてしまい、急所でもある顎に強烈な一撃を食らってしまう。人間の急所と言われるものはいくつかあるが、中でも顎は防御しにくい上に当所が悪いと脳震盪を引き起こしかねない。この一瞬の出来事をアニメでは脳震盪によって起こる耳鳴り、脳の揺れ、視界のゆがみを鮮明に描いていた。

 動けずにいる釘崎をよそ目に横たわっている新田を何度も斬りつける重面。殺す理由はただひとつ「楽しいから」だ。重面の陽気な性格も相まって不穏な空気が漂い始めていく。幾度もの戦闘を経験してきた釘崎であっても、新田を庇いながら戦うのはあまりにも無謀だ。万事休すか……と思われた矢先に現れたのが七海。じわじわと迫りくるカットとともに登場した七海に感じるのは圧倒的な強者としての存在感だ。

 「仲間の数と配置は?」と何度も問いただす七海の威圧感を表現する津田健次郎の声には痺れた。それは内面から沸々と湧き上がる静かでありながら情け容赦のない怒り。津田は決して表には出てこない抑圧された内面の心情を声で表現するのが本当に上手い。決して多くを語るわけではないが、この一言で感情の大きさを想像できるのが良い。

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