『舞いあがれ!』を読み解く鍵は、凧、飛行機に株価? 安直な構造にはしない脚本への信頼

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第7週「パイロットになりたい!」では舞(福原遥)がパイロットを目指し、航空学校を受験しようと動き出す。飛行機を作りたくて大学に入ったにもかかわらず中退も辞さない構えに父・浩太(高橋克典)も母・めぐみ(永作博美)は戸惑うばかり。とりわけめぐみは承服できない。

 めぐみだって大学を中退して結婚し、東大阪の町工場の女将さんになることを選んだにもかかわらず、なぜ、この情熱を理解してくれないのか舞にはわからない。

 その頃、舞の幼なじみの貴司(赤楚衛二)は会社を辞め家を出て行方知らずになる。会社の仕事が自分に合わず、そのストレスを解消させてくれる古書店デラシネがふいに閉店し頼れるものがなくって途方に暮れた貴司。子供の頃、舞から送られた絵葉書の五島の大瀬崎灯台にひとり出かけ、3日3晩過ごしていた。貴司にとって五島はデラシネと同じ作用をもたらす場所なのであろう。つまり、しばし羽根を休めまた飛び立つ場所。そこでほっとひと息つき、するとじょじょに自分の状態や自分と世界の関係が客観的に見えてくる。そんな場所なのだ。

 貴司を心配して駆けつけた舞や久留美(山下美月)も、五島の夕日、空、海を見ながら自分のことを改めて考えることになる。

 浩太とめぐみも五島にやって来る。舞を迎えに行くという理由にかこつけて、浩太は祥子(高畑淳子)に改めて挨拶したかったのであろう。きっと会社が軌道に乗って順調だから、今なら堂々と会うことができるという自信が持てたのだろうと感じる。なにしろ、祥子が浩太との結婚を反対した理由が町工場の経営が不安だったからだ。

 祥子が母としてめぐみに苦労をさせたくなくて結婚を厳しく反対した。舞のことを心配するめぐみは、あの頃の祥子と同じである。祥子の気持ちを理解しためぐみはついに頑なな心を溶かす。と同時に、めぐみは舞の固い決意を認める気持ちにもなる。

 めぐみが大学生のときから島を出て結婚して出産し、舞が19歳になってようやく過去の確執が消えていく。ここまでくるまでに実に長い時間を要したけれど、舞が大人にならないと叶わないことだったのであろう。

 それぞれの複雑な事情や心情に関する具体的な描写は少なめである。舞たちに漂う空気を分析していくと、人間関係はデリケートで、それぞれの事情やプライドが絡み合って、円滑に進まないことが多々あるものだという生きづらさが、重すぎることなく、密やかに漂っている。

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