『ちむどんどん』三女の初恋がようやく実りの兆し? 歌子×智の波瀾万丈な恋路を辿る

 『ちむどんどん』(NHK総合)第21週では、暢子(黒島結菜)の店がオープンにこぎつけたその裏で、歌子(上白石萌歌)と智(前田公輝)の恋路にも進展があった。これまで、長きにわたり歌子の報われない片想いが描かれてきただけに、ようやく……という思いも強い2人の関係。これを機に、歌子と智の関係を振り返りながら2人の歩みをまとめていきたい。

 『ちむどんどん』の視聴者からしてみれば、歌子がどれだけ長いこと智に想いを寄せてきたかは周知の事実。幼少期のエピソードで特に筆者の記憶に残るのが、運動会で智(宮下柚百)が「俺にとっては、歌子が一等賞」と言い、首に手作りのメダルをかけた瞬間だ。このシーンを見た時に、歌子(布施愛織)は智を好きになるだろうと確信できるほど、歌子はキラキラとした表情を見せていた。その後、歌子がメダルを宝箱に入れて大切に取っていたことで、想いの強さはより強調される。その一方で、歌子と智の関係にはそれだけの歴史がある。つまりは智が暢子を好きだったことも、歌子はよく理解してしまっているのだ。

 第21週での2人は、智の過去の恋愛が尾を引いてこじれてしまった部分もある。やんばるの比嘉家を訪れた智は、歌子のために購入した高価なペンダントを手渡すのだが、その際、素直になれず、先に暢子にも同じものを渡したと嘘をついてしまう。歌子にとってこの言葉は、ただの照れ隠しでは済まされないだろう。ずっと想い続けてきた人に想い人がいたことは誰よりも歌子がわかっている。歌子はこれまでも何度も暢子のことを“敵わない相手”だと思ってきた。恋愛だけでなく、体力や行動力においても……。智の言葉は、そんな歌子の苦しい気持ちを刺激する。

 照れ隠しをしてしまった智にも、事情はあった。これまでずっと暢子を好きだったのに歌子との恋を進めていいのか、智は躊躇している様子。姉妹関係にあたる2人を好きになってしまった智は、姉の暢子にフラれた後に、妹の歌子を好きになるのは筋が通らないのではないかと気にしているのだ。この戸惑いが、歌子と気持ちの上では両思いにも関わらず恋がスムーズに進まない理由でもある。そして沖縄料理店「ちむどんどん」を手伝うために上京してきた歌子は何より辛い言葉を聞いてしまうのだった。

 歌子の耳に飛び込んできたのは「姉のお古、おさがりの智と……」という、聞くに堪えない言葉。これは酔っぱらいの会話では片づけられないレベルで歌子を傷つける言葉だ。暢子の存在は、歌子にとって憧れ、羨み、時には自己嫌悪のきっかけでもあった。だからこそ、この言葉に深く傷ついた歌子は、つい智と口喧嘩をしてしまう。だがその喧嘩の直後、智が事故で重体になったとの知らせが。この緊急事態が心の壁を取っ払う大きなきっかけになる。

関連記事