『ちむどんどん』物語も折り返しへ 黒島結菜、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌が残した爪痕

黒島結菜

 暢子は、いわゆる万人に愛される王道のヒロインではない。自分にも他人にも正直で、どこにも嘘がない。それはもちろん彼女の素晴らしい長所だ。しかし、そのまっすぐさは人の痛みに鈍感であることの裏返しでもある。

 智(前田公輝)のアプローチを最後まで交わし続けたのも、愛(飯豊まりえ)に和彦(宮沢氷魚)への恋心を吐露したのも、すべては自分の“わじわじ”とした感情から逃げるため。代わりに相手が“わじわじ”することに関しては想像も及ばない。

 その鈍感で少女然とした振る舞いを嫌味なく表現できるのが、黒島の力と言える。一歩間違えれば、計算高い人物として映りかねないが、暢子の根っこにある素直さは失われていない。人としても、料理人としても、まだ成長過程にあるヒロインと黒島は逃げることなく対峙している。この先、物語が完結を迎える頃、暢子はどんな女性になっているのか。黒島のフレッシュなイメージからの脱却にも期待したいところだ。

上白石萌歌

 俳優業だけではなく、“adieu”の名義で2017年頃からアーティスト活動を行っている上白石萌歌。しかし、当初は素性を隠しての活動だったこともあり、意外に彼女の歌声をじっくりと聴いたのは本作が初めてという人も多いのではないだろうか。

 幼い頃から病気がちで、引っ込み思案な歌子にとって“歌”は唯一自分を表現できるツール。だから本作において上白石はただその歌声を聞かせるだけではなく、「自分も他の人と同じように輝きたい」という歌子の痛々しいほどの想いを乗せて届けている。

 それは幼い頃からミュージカルの舞台に立ち続けてきた彼女だからこそできたこと。今後はドラマや映画など、映像作品でも歌唱力を活かしたキャラクターを演じることが増えてくるだろう。

 沖縄の本土復帰から50年という、決して短くはない四兄妹の歩みを描く本作。第15週「ウークイの夜」では、彼らが優子の再婚話を聞きつけて生まれ育った家に集合し、そこで秘められていた両親の過去がついに明かされる。なぜ優子が子供たちに何度も「幸せを諦めないで」と伝えてきたのか。その思いを受け、彼らと共に変化していく竜星涼、川口春奈、黒島結菜、上白石萌歌の芝居に注目したい。

参照

※ https://realsound.jp/movie/2022/06/post-1049785.html

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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