『ちむどんどん』物語も折り返しへ 黒島結菜、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌が残した爪痕

 朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)の放送開始から3カ月が経った。

 朝ドラ史上初となる3人のヒロインが紡いだ前作『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)とは異なり、本作のヒロインは暢子(黒島結菜)ひとり。だが、実際には東京・鶴見編に突入して以降も、兄・賢秀(竜星涼)、姉・良子(川口春奈)、妹・歌子(上白石萌音)の人生が同じ熱量で描かれている。

 そんな“四分割”の物語が折り返し地点を迎えた今、改めて彼ら4人の役者陣がこの数カ月に残した爪痕を辿っていきたい。

竜星涼

 詐欺師に騙されて行方をくらませたかと思えば、今度は自分が詐欺まがいの商売に手を出し、登場する度に「また何かしでかすのでは?」と視聴者をうんざりさせている賢秀。竜星涼はその反応をむしろ「役者冥利に尽きる」と好意的に受け止め、伸び伸びと悪意なき“ダメ兄貴”を演じてきた。(※)

 その行動は決して褒められたものじゃないが、どこか哀愁漂うというか、憎みきれないというか、良くも悪くも本作の象徴となっている。それは竜星が愛情をもって賢秀を演じ、彼の隠れた弱さや苦悩を随所に覗かせていたからだろう。

 だから怖いもの見たさもあるが、賢秀の行く末を最後まで見届けたいという気持ちにさせてくれる。『おちょやん』(NHK総合)のテルヲ(トータス松本)や『カムカムエヴリバディ』の算太(濱田岳)のように、意外と物語から退場したあかつきには“賢秀ロス”が広がる予感も。役としての賛否はあれど、結果的に竜星はその名を朝ドラの歴史に刻むはずだ。

川口春奈

 『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)での若手弁護士役や、『着飾る恋には理由があって』(TBS系)でのインフルエンサー役など、バリバリ働くキャリアウーマンを演じてきた川口春奈。そんな彼女が本作で、“自己実現”と“子育て”の狭間で揺れる等身大の役柄に挑戦している。

 妊娠を機に一度は納得して家庭に入ったものの、やはり教師としての自分を諦めきれなかった良子。夫やその家族の反対を押し切って仕事に復帰した手前、彼女は「結果を残さねば」という焦りに苛まれていく。そんな自分に課した厳しさでがんじがらめになっていく良子の姿を川口はリアルに映し出してきた。

 真面目で努力家な一面だけではなく、自分の弱さも受け止めて、親としても教師としても成長し続ける良子を応援せずにはいられない。今回の役を演じたことで憧れの対象から少し身近な存在となった川口の役の幅もさらに広がっていくのではないだろうか。

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