そういえば、本来であれば、大月家の食卓ではジャズ音楽が流れていても不思議はなかったわけで、そうすればひなたは幼少期より日頃からもっと英語に慣れ親しんでいた可能性だって大いにあったのだ。錠一郎（オダギリジョー）が突然トランペットを吹けなくなってしまったことにより、取って代わるように大月家のテレビでは時代劇と野球番組が流れるようになり、それが今のひなたと桃太郎（青木柚）の人格形成にも大いに繋がっているのだから、“何が良い、悪い”なんてことは簡単には言えない人生の多面的な面白味が詰まっている。

　さらに言えば、ご縁があるものというのは本来もっと早くに訪れていたかもしれないタッチポイントが失われたとて、また必ずその人の元にやって来て巡り合わせてくれるのだとつくづく思わされる。ここで「どこで何をして生きようと、お前が鍛錬し、培い、身につけたものはお前のもの。決して奪われることのないもの」という虚無蔵（松重豊）の言葉がふと思い出される。

　本作で少し影を潜めていた「英語」が一気に息を吹き返したと思ったら、なんと第19週のラストではトランペットを手に取り口元に当てる錠一郎の姿が見られた。大月家に確実にまた新しい風が吹き込もうとしている。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演：上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本：藤本有紀
制作統括：堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽：金子隆博
主題歌：AI「アルデバラン」
プロデューサー：葛西勇也・橋本果奈
演出：安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか　
写真提供＝NHK