『最愛』大輝にとっての一番重要な真実がそこに “事件”が描かれた第1話を熟考する

 いずれにせよ、大輝の影を一番色濃く感じられるのが自筆のメッセージ付きのお守りの存在だ。だとしたらこのお守りは、あるべくしてそこから発見されたと考えられるのではないだろうか。つまり「大輝の書いた字だと気づいていた何者かが、大輝に濡れ衣を着せるために紛れ込ませた」と考えることもできるだろう。お守りを紛れ込ませた人物の特定には言及しないが、藤井もまた大輝の字を知っているうちのひとりであるからこそ、冒頭の発言に繋がったのではないか。当時、陸上部のエースとして活躍していた大輝は、目立たない存在ではなかったはずだ。加えて梨央と特別に親しかったことは多くの人が気付いていた。大輝を妬む人物がいても不思議ではないゆえ、大輝はそんな人物にはめられてしまったのではないだろうかと推測する。

 大輝が梨央を「最愛の人」として大切にしてきたことこそが、本作において一番重要な“真実”だ。これまで胸を締め付けられるような思いでふたりを見守ってきた私たちの元にも、大輝と梨央の深い絆はしっかりと届いている。加えて私たちは、大輝が梨央を愛していることと同じくらい、彼がまっすぐな人物であることも心得ている。事件に加担することや、事件のことを知ったまま黙って警察官という職務につける男ではないのだ。正義を突き進む熱い男だという側面も見てきたからこそ、視聴者が大輝を信じる気持ちも大きいだろうと感じる。今、望むのは、かつてのように太陽の下で大輝と梨央、そして優が笑顔を向けあう姿が見られることだ。そうでないと、最終話までに丁寧に描かれてきた大輝の人となりを信じてきた私たちの行き場のない気持ちが消化できない。これだけ魅力的に、愛と正義を貫く男性に罪を背負わせるなんて受け入れたくないのだ。

 しかし、始まった物語には必ず終わりがある。事件の真相を解き明かすことはもちろん、ラストで描かれる梨央と大輝に、かつてのような明るく幸福に満ちた未来が訪れていることを願ってやまない。

■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル「君に夢中」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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