『アバランチ』福士蒼汰、正義の間で引き裂かれる 靴についた泥が示すそのありか

 『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)第6話。羽生(綾野剛)が指名手配される前話の衝撃的なラストから、そこに至る過程をたどっていく。

 アルベルト・ガルシア(フェルナンデス直行)が入国した。羽生の元捜査協力者で3年前に大山(渡部篤郎)が仕掛けた偽装テロに関与したガルシアは海外逃亡していた。事件の生き証人であるガルシアから大山のことを聞き出すため、あるいは口を塞いで証拠を隠滅するため、アバランチと大山はそれぞれガルシアと接触を図る。大山の腹心である戸倉元公安部長(手塚とおる)にガルシアの確保を命じられたのは、神奈川県警に所属する西城の父・尚也(飯田基祐)だった。西城(福士蒼汰)は捜査情報を入手するため父親に面会する。

 戸倉は羽生の元上司で、藤田(駿河太郎)が死んだ3年前の真相を知っている可能性が高い。真実を知ろうとしていた羽生に調査打ち切りを告げたのが戸倉であり、羽生が警視庁を辞めるきっかけとなったのは前回「Episode0」で描かれたとおりだ。ガルシアの帰国をきっかけに両者の確執が再燃する。父と子、上司と部下。身近にいて互いをよく知る者同士が相反する立場に身を置く時、何が彼らをそうさせているのか? 「Episode5」のサブタイトルは「正義」であり、西城父子の対話が本作に潜むテーマを鮮明にした。

 「父さんにとっての正義って何?」と西城は父親に問いかける。アバランチという組織に権力を持つ側への反撃という要素があることは間違いない。そのことは端的に部下が上司を諫め、子が親に抗う構図にも表れている。だが、そこで終わってしまえば表層的な理解にとどまる。なぜなら対立する体制側にも守るべき正義はあるからで、そうなると結局のところ、なぜそれを守るのかという理由に帰着する。尚也が息子の問いにすぐ答えず、「息子として父親に聞いているのか? それとも現職の刑事同士としての問いか?」と聞き返したのは、正義を相対的なものとして捉える本作の視点を象徴している。

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