『カムカムエヴリバディ』は岡山を知ればもっと楽しくなる! 県民も納得の描写の数々
また、稔や勇の家業も岡山県民にとっては納得のいくものだったのではないだろうか。雉真家は父・千吉が一代で築き上げた繊維の名家。岡山県は昔から繊維産業が盛んで、特に学生服の生産シェアは日本一だ。ドラマでも描かれているように戦時中は学生服の製造は縮小され、代わりに工場では軍服が作られるようになった。高度経済成長期に作業服製造へと転換したのち、60年代に国内で初めてジーンズが縫製されたことをきっかけに今や岡山はジーンズの聖地と呼ばれている。
よく見聞きすると、作品のあちらこちらに見つかる岡山の要素。ただ何よりも県民にとって嬉しいのは、テレビから馴染みのある岡山弁が聞こえてくることだろう。他の県に暮らす人にとって、岡山弁は少し気の抜けるような言葉に聞こえるかもしれない。それは岡山弁がフランス語のように“リエゾン”するからだ。「~してる」「~みてる」が「~しょーる」「~みゅーる」になったり、「わたしは」が「わたしゃあ」になったり。語尾に「~じゃ」とつけることもあり、まるで昔話に出てくるおばあちゃんが喋っているようなほっこりとした雰囲気がある。喋る人によってもイメージは変わってくるが、笑顔と優しい声が魅力的な上白石に岡山弁はぴったりでお茶の間に癒しを与える要素の一つとなった。御曹司の風格漂わせる松村からローカルな言葉が発せられ、これもまたギャップとしていい。
また本作の“岡山編”には、ネイティブ岡山弁の俳優陣も。B’zの稲葉浩志、星野仙一、千鳥や次長課長、MEGUMI、ブルゾンちえみ、桜井日奈子など、数ある岡山県出身の有名人がいる中で、特に地元愛が強いのは安子の父・金太を演じる甲本雅裕。ちなみに小しず役の西田尚美はお隣の広島県出身で、2人のやりとりには安定感がある。さらに、安子の親友・きぬ(小野花梨)の父親で豆腐屋を営む卯平役の浅越ゴエ、稔行きつけの喫茶店で働く健一役の前野朋哉も岡山県出身。2人はおかやま晴れの国大使を務めており、特に浅越はローカル番組『なんしょん?』(岡山放送)でレギュラーを務めるなど、“岡山県の顔”と言っても過言ではない。また“岡山編”に続く、“大阪編”に岡山県出身のスター・オダギリジョーが登場するのも見ものだ。
自然災害が少なく、気候が温暖で過ごしやすい岡山県。安子もこの場所で平和にのんびりと過ごしていたが、第二次世界大戦中に市内は大規模な空襲を受ける。1945年の岡山大空襲だ。商店街も壊滅的な被害に見舞われたが、今も表町商店街の顔となっている百貨店・天満屋を中心に復興を遂げていった。第3週以降では、戦後を逞しく生き抜いてきた人々の姿も描かれることだろう。
JR岡山駅から岡山城まで市内を走る路面電車で行くこともできるが、徒歩でも20~30分。ぜひ聖地をめぐる方は朝丘町商店街のモデルと思われる表町商店街を通り、食べ歩きしながら安子が生まれ育った街の雰囲気を感じてほしい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK