『カムカムエヴリバディ』は兄・松村北斗、弟・村上虹郎のキャスティングが大正解

 “朝ドラ”史上初の3人のヒロイン、上白石萌音、深津絵里、川栄李奈が登場する『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)の時代の描き方、登場人物が生きる日常の丁寧な描写が話題となっている。

 “朝ドラ”の歴史を振り返ると、日本でテレビのカラー放送が開始したのが1960年、その翌年の1961年に第1作『娘と私』が放送されてから本作で105作目となる。前作の『おかえりモネ』では子役が登場せず、ヒロインの百音(清原果耶)が18歳で故郷を離れ、登米で働き始めたところから物語が始まった。百音と菅波(坂口健太郎)は出会ってから付き合うまでに2年半以上の時間がかかり、菅波がプロポーズしてからも遠距離で会話は電話のみ。菅波が百音の家族に正式に挨拶したのは第24週で最終回の直前だった。

 本作は第2話の最後に子役から14歳に成長したヒロインの安子役として上白石萌音が登場し、第3話で安子の初恋の相手、雉真稔(松村北斗)と出会った。

 ヒロインが3人存在して、母から娘へとバトンをつなぐ100年のファミリーストーリーという構成のため、本作は半年をかけて1人のヒロインの人生を描く従来のタイプの“朝ドラ”とは一線を画す。自慢のあんこを炊き、おいしい和菓子を作り、ラジオを囲んで家族で穏やかに過ごす日常の中にある豊かさをどれだけ観る側が受け取ることができるか。「時間の流れ」「日常」を強く意識させられる作品であることは間違いない。

 話の流れがスピーディーで小気味良く、コントラストのある場面展開に心をつかまれる本作。例えば、第4話で安子は稔に自転車の乗り方を教わり、初めてジャズが流れる喫茶店にも連れて行ってもらった。第5話では、幼なじみのきぬ(小野花梨)のナイスアシストで安子と稔は夏祭りに出かけ、稔が大阪の大学へ戻ったのをきっかけに、岡山と大阪で文通を始めた。ただ、恋模様が淡々と描かれるのではなく、情緒豊かで胸の奥が温かくなるようなやりとりがある。

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