上白石萌歌、『子供はわかってあげない』は新たな代表作に 主人公に与えた豊かな魅力

 本来であれば2020年の初夏に封切られる予定であったものの、1年以上の延期を経て、ついに公開された映画『子供はわかってあげない』に主演している上白石萌歌。同作には、真夏の抜けるような青空、爽やかな潮風、少年少女の笑顔といった、「夏映画」の象徴的なものがぎっしりと収められている。それらの中心に笑顔で立っているのが、主演の上白石だ。この映画には、彼女にしか表現することのできない、そして、このときの彼女にしか表現することのできなかった“きらめき”が刻まれている。

 本作で上白石が演じるのは、17才の女子高生。現在の上白石はすでに20代へと足を踏み入れているが、撮影時は10代だ。まだまだ彼女はこれからも10代の若者を演じられることと思うが、俳優本人が成人しているのかどうかは、10代の若者を演じるうえで大きく変わってくると思う。つまり撮影時の上白石は、演じるキャラクターと極めて近い感覚や感性を持っていたのではないかと思うのだ。例えば、卒業や成人など、人は誰しも大きな節目を迎えると周囲の環境がガラリと変わるもの。当然、環境が変われば少なからずその人自身も影響を受けることだろう。上白石が演じている朔田美波というキャラクターは、20代に入ったいまの上白石にも演じられるのだろうが、恐らく、この映画に収められている“朔田美波=上白石萌歌”とは異なるものになるはずだ。本作に見られる“朔田美波=上白石萌歌”とはズバリ、等身大なのである。


 そんな上白石が体現している朔田美波。水泳部に所属する彼女が、書道部に所属する男子・もじくん(細田佳央太)と出会うことから物語は始まる。本作はマンガ家・田島列島による長編デビュー作であり、数多くのファンを持つ同名マンガを実写化したもの。沖田修一監督作らしい、少々オフビートなノリで展開していく演出や、シナリオ化するにあたって肉付けされた点はもちろん大きいが、やはりそれ以上に、生々しい“間”の取り方や、ゆるいセリフの調子など、上白石の演技こそが、紙の上で平面的に輝いていたマンガのキャラクターに豊かな魅力を与えているように思う。

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