『おちょやん』小暮と百合子がソ連に亡命!? 戦前のスキャンダル女優とも重なるエピソード

 小暮(若葉竜也)と高城百合子(井川遥)は、千代(杉咲花)の家に泊めてもらうために訪ねてきていた。雪で列車が動かなくなり、足止めを食らったのだ。連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)第78話では、小暮と百合子がソ連に亡命しようとしていることが発覚する。

 千代や一平(成田凌)と再会することとなった小暮は、いつの間にか百合子と結婚していた。4人は食卓を囲み和やかなひと時を過ごす。幼い千代が初めて百合子の舞台「人形の家」を覗き見てから幾度も口にしてきた「私には神聖な義務がほかにあります」の台詞も飛び出し、うれしそうにはしゃぐ千代。

 だが、そんなふたりが訪れてから一平は支配人の熊田(西川忠志)に呼び出されることに。あろうことか小暮と百合子を特高警察が探しているというのだ。どうやらふたりが現在やっている芝居は戦争に向おうとしている日本にとって不利益な内容であるため目をつけられた模様。既に亡命を心に決めていた小暮が、久々の再会後にぽつりと「こんなに楽しいと決心が揺らいでしまいそうだ」と語る姿が胸に刺さる。

 生まれた時から何不自由ない暮らしをさせてもらっていた小暮は、ある時、真面目に働いているにもかかわらず治療費が払えなくなった患者が、実家の病院から追い出されるのを見てしまう。その不平等さを目の当たりにし「一生懸命生きてる人たちが平等に報われる世の中」に変えたいと願うようになったという。一方の百合子も、「もうこの国では私たちのやりたい芝居はできない」と話す。だが百合子は、家庭劇の「頑張れ! 集配婆さん」を最低だと言いつつも「女優同士が分かりあう必要なんてない」と、自分とは違った道に進んだ千代の人生を、認めているような素振りも見せた。

 千代が女優を目指すきっかけともなった百合子の存在。だが再会した今、ふたりの目指す方向は大きく変わってしまった。しかし小暮や百合子、千代らとも根底には「人々を救いたい」という願いがある。この共通した想いがあるからこそ、互いを尊重しあえるのだろう。

 今回、ソ連亡命しようとする百合子の姿に重なるのが戦前の大女優にしてスキャンダル女優とも呼ばれた岡田嘉子の存在だ。昭和13年に演出家の杉本良吉と共に樺太国境を超えてソ連に亡命し日本中を驚かせることとなる。岡田と杉本の運命はあまりにも過酷であったが、小暮と高城の進もうとする道が険しいものにならないことを願わずにはいられない。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/