“天陽くん”はいつまでも心の中に 『なつぞら』吉沢亮が描き遺したなつの姿

 なつ(広瀬すず)の大切な幼馴染の天陽(吉沢亮)がこの世を去った。感情的になることもなく、努めて冷静でいるように見えていた彼女だったが、やはりその心中の悲しみと苦しみは計り知れない。

 連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合)第136話では、なつが雪月を訪れる。そこで彼女は、天陽が描いたという“あるもの”を、同じく幼馴染である雪次郎(山田裕貴)のその父・雪之助(安田顕)から見せられた。

 娘の優(増田光桜)を連れて、雪月を訪れたなつ。そこにはもちろん、幼馴染の雪次郎と、その妻であり、なつの姉妹でもある夕見子(福地桃子)がいる。大切な友人を亡くしたばかりのなつだが、それはみな同じこと。こうして残された者同士が身を寄せ合うことができることが、せめてもの救いだろう。

 そしてさらにそこへ、雪次郎の母・妙子(仙道敦子)、祖母・とよ(高畑淳子)、そして父の雪之助も顔を出し、にぎやかな場となる。いまや一人前の菓子職人となった(とはいえ、この手の職業にゴールはないのだろう)雪次郎の自慢の菓子を囲みながら、おのおのが天陽へ思いを馳せる。

 そんな中、雪之助がなつに“あるもの”を見せる。それは、雪月の銘菓を包むための包装紙で、その表面の絵を、天陽が描いたのだという。そこに描かれているのは、のどかな大草原に佇む、一人の少女の姿。それは私たちも知っている、幼い頃のなつの姿そのものだ。「なっちゃんが挫けそうになったら、それで包んで雪月のお菓子を送ってあげて」と天陽は口にしたようで、「雪月のお菓子がたくさんの人を喜ばせるように、なっちゃんもたくさんの人を喜ばせなくちゃならない。それをなっちゃんも感じてくれるはず」という強い想いが、そこに込められているようだ。天陽にとって、いかになつの存在が大きかったのか。

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