中村文則の“闇”をいかに映像化したか 『銃』武正晴監督が語るラストシーンに込めた思い

どんな主人公にも“救い”を

ーー村上虹郎さんはもちろん、広瀬アリスさん、日南響子さん、リリー・フランキーさんと、登場人物は多くないですが、見事に皆さんハマっています。キャスティングは奥山さんと武監督が相談しながら?

武:トオル、刑事、トオルが最後に対峙する男(村上淳)、この3人以外は任せてくれました。女性陣はオーディションを重ねがら、本当にイメージした通りのキャスティングができました。

ーー虹郎さんが父・村上淳さんと本作で共演するというニュースを見たときはびっくりしました。

武:そうなんです。これは絶対にいい化学変化が起きるぞと。マナーや周囲の人間の目を気にしない、俗にいうチンピラ。村上淳は僕が助監督時代からこの世界で一緒にやってきた人なので、彼が演じてくれたら単純にいいなとまず思ったんです。その後に、「あ、親子か」と(笑)。奥山さんと相談の上、虹郎が嫌だと言ったらやめようとは思ったんですが、意外に2人とも楽しんで乗っかってくれました。案の定、現場では最高としかいいようがないぶつかり合いをしてくれました。沢山の現場を経験してきましたが、その中でも絶対に忘れられない時間です。

ーーラストシーンは原作にはない描写があります。最後のトオルの表情は、どこか“解放”されたようなものを感じました。

武:主人公はどんなやつでも救ってあげたいという思いがあります。『百円の恋』でもボロボロになった一子(安藤サクラ)を1人で帰らすわけにはいかない。一子にも救いを与えたいから狩野(新井浩文)を登場させた。トオルが自らがしでかしてしまったことに対して、「俺、やっちゃったよ」と思わず言える相手がいること。あのまま、1人で物語を終えるよりも、誰かトオルを迎えに行ってあげる人間がいてほしかった。トオルも迎えに来てくれた人間の顔を見て、どこかホッとする。そこに何かを残すことができないかと。虹郎がトオルとして最後に見せた笑顔には、こちらの予想を遥かに越えた表情だっただけに現場で震えるものがありました。ああいった瞬間に立ち会えるからこそ、映画を撮り続けてよかったなと思えます。

ーー武監督のフィルモグラフィーを振り返ると、主人公が一歩先に進む、ある境遇から抜け出す、救われるというものが、大きなテーマとしてあるように感じます。

武:主人公がどんなにダメなやつでも、約2時間の物語の最初と最後で少し変化している。映画が始まったときよりは、主人公の状況も「少しはマシになったかな、まだ辛いことも続くけど」というぐらいのバランスですね。それが自分たちの人生にも置き換えられるリアルなのかなと。僕も10代の頃に観たそういった作品に救われ、今も映画を作り続けることができているように、本作を通して観客の方に何かを届けることができればと思います。

(取材・文=石井達也)

■公開情報
『銃』
テアトル新宿ほか全国公開中
出演:村上虹郎、広瀬アリス、日南響子、新垣里沙、岡山天音、後藤淳平(ジャルジャル)、中村有志、日向丈、片山萌美、寺十吾、サヘル・ローズ、山中秀樹、リリー・フランキー、村上淳
企画・製作:奥山和由
監督:武正晴
原作:中村文則『銃』(河出書房新社)
脚本:武正晴、宍戸英紀
制作プロダクション:エクセリング
企画制作:チームオクヤマ
配給:KATSU-do、太秦
製作:KATSU-do
2018年/日本/カラー&モノクロ/DCP/5.1ch/97分/R15+
(c)吉本興業
公式サイト:thegunmovie.official-movie.com
公式Twitter:@GunMovie

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