相葉雅紀、初めて悲しみの表情を見せる 『僕とシッポと神楽坂』が描く獣医師たちの苦悩

 噂を拡散したのは早苗の息子だった。大切なペットを亡くし、ふさぎこんだ母親の様子を見た息子は、ネット上にその憤りを書きなぐったのだが、本人の予想に反して広まってしまったのだと言う。息子は達也に謝罪するが、達也は「謝らなければならないのは僕のほうです」と頭を下げる。

 おそらく獣医師は、さまざまな動物の命を助けると同時に、助けられなかった命も目の当たりにしているはずだ。ドラマでは描かれなくとも、達也が獣医師を続ける限り、彼はこれからも動物の死を目の当たりにすることだろう。第1話から第3話までは、相葉は達也の優しさを感じさせる穏やかな演技をしていた。しかし第4話では、相葉らしい朗らかな雰囲気を抑え、「命に向き合いたいんです」という達也の思いを受け止めながら、いつもとは違う達也の姿を見せていた。患者やトキワの前では“いつも通り”の姿を見せる達也。しかし相葉は、そんな達也から無力感や悲しみ、よく眠れていないような疲労を感じさせ、第4話の主題である「家族の一員を亡くす悲しみ」を獣医師の立場から表現した。

 重たい主題である動物の死を描いた第4話だったが、物語全体が重苦しくなることはなかった。それは、趣里演じるすず芽やトキワに想いをよせる田代のシーンがコミカルに描かれていたからだろう。彼らのシーンが挿入されることで、『僕とシッポと神楽坂』の穏やかさが失われることなく、重みのある内容を丁寧に描くことができたのではないだろうか。相葉が優しげな表情を抑えた分、彼らがコミカルな雰囲気を演じる。演出のバランスの良さにも感動させられる回だった。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15(一部地域で放送時間が異なる)
出演:相葉雅紀、広末涼子、趣里、小瀧望(ジャニーズWEST)、大倉孝二、村上淳、矢柴俊博、矢村央希、 かとうかず子、イッセー尾形
原作:たらさわみち『僕とシッポと神楽坂』(officeYOU 集英社クリエイティブ)
脚本:谷口純一郎、国井桂
監督:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/shippo/

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