平田オリザが『さようなら』Q&Aで深田監督にメッセージ 「映画の強みを存分に発揮してくれた」
第28回東京国際映画祭コンペティション部門に出品されている『さようなら』の上映後Q&Aが、10月27日(火)にTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて行われた。
『さようなら』は、劇団・青年団を主宰する平田オリザとロボット研究家の石黒浩が共同で手がけたアンドロイド演劇を、『ほとりの朔子』の深田晃司監督が映画化した作品。放射能に侵された近未来の日本を舞台に、国外へ次々と避難していく国民をよそに、避難優先順位下位のため取り残された外国人の難民ターニャが、幼いころから病弱な彼女をサポートするアンドロイドのレオナに見守られながら、最後の時を迎えるまでを描く。
Q&Aには、深田晃司監督と主人公ターニャを演じたブライアリー・ロング、原作者の平田オリザが登壇。2010年のアンドロイド演劇「さようなら」の映画化となる本作について、監督は「映画『さようなら』はオリザさんが作り上げた演劇、そして石黒先生が作り上げたロボット工学、この二つの成果をお借りして出来た作品」と述べ、両者に感謝の気持ちを述べる。平田は、演劇版「さようなら」制作の経緯を、「ブライアリーがイギリスから日本へ1人でやってきたタイミングで、石黒先生からアンドロイドを使った企画をやらないかと無茶ぶりがあり、多言語を話す外国人とアンドロイドという組み合わせが面白いと思った」と振り返った。2010年に行われたフェスティバル/トーキョーでその演劇を観た深田が映画化を熱望。「死に向かう女性と死を知らぬアンドロイドが生み出す“死の空間”を、じっくり時間をかけて作りだしたかった」と、映画化に際しての思いを吐露した。
完成した映画の感想を聞かれた平田は、「率直に綺麗な映画にして頂いてありがたい。深田監督作品は青年団の劇団員が出ているので、幼稚園のお遊戯会に来た父親の感覚で観てしまう。演劇でなく映画なので心配ないのに、間違えないか不安で冷静に観られなかった」と語り、青年団主宰の立場としてのコメントに、会場は笑いに包まれた。続けて、「演劇は観客の想像力を要するもの。本作は映画の強みを存分に発揮してくれました。たった15分の演劇作品が映画になり、世界中の人にまた観てもらえる機会ができ、大変嬉しいです」と、青年団の演出部にも所属する深田を激励すると、深田は「2010年に立ち上げ、最初はかなり特殊な日本映画になると思っていましたが、このような形で皆さんと共有することができて奇跡のようです」と万感の思いを込め、観客にメッセージを送った。
『さようなら』は、11月21日(土)から全国ロードショーとなる。
■公開情報
『さようなら』
11月21日(土)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
脚本・監督:深田晃司
原作:平田オリザ
アンドロイドアドバイザー:石黒浩
出演:ブライアリー・ロング、新井浩文、ジェミノイドF、村田牧子、村上虹郎、木引優子
配給・宣伝:ファントム・フィルム
(c)2015「さようなら」製作委員会
公式サイト:http://sayonara-movie.com/