『TOKYO CITY GIRL』インタビュー

武田梨奈が語る、女優としての次のステップ「アクションだけではない、奥行きのある演技がしたい」

「映画をもっとよく知るためには、食わず嫌いはいけない」

 

——武田さん自身は、映画がとても好きで「人生を映画に捧げたい」とまで言っていますが、女優業以外ではどんな風に映画と接していますか。

武田:今年の3月には、『第11回大阪アジアン映画祭』で国際審査員を務めさせていただきました。アジアの作品をたくさん観たんですけど、印象深いものが多かったですね。特に感銘を受けたのは、香港映画の『セーラ』という作品で、雑誌記者の女性がタイを訪れて、現地で売春をする少女と交流し、様々な葛藤と向き合うという話です。とても社会性に富んだ作品で、すごく良い内容だったので、日本でも公開してほしいと思っています。エンタメ系の作品に注目が集まりがちな日本では、なかなか見られない種類の作品で、こうした映画がもっと広く鑑賞されるようにするにはどうしたら良いのか、わたし自身も常に考えています。

——具体的にどんな活動を?

武田:数年前から中目黒で『ナカメキノ』というミニ映画祭をやっていて、そこでは毎月100名の方が無料で映画を鑑賞できるんです。多くの人に、映画をもっと身近に感じてほしいというコンセプトのもとに行なわれている映画祭で、まるで『ニュー・シネマ パラダイス』のワンシーンのように、みんなで野外に集まって映画を観たりもしています。また、先輩であり俳優の齋藤工さんは「cinéma bird」という移動映画館をやっていて、彼は映画を観ることができない環境のところを訪れて、さまざまな映画を上映しています。わたしはまだ力不足だけど、いろんな作品に関わって力をつけて、いずれは自分の手でそういう活動にも貢献したいですね。

——なるほど。ちなみに最近、武田さん自身が注目している映画のジャンルは?

武田:最近は今まで避けてきたような作品も観るようになりました。例えば、昔から苦手だったエロやグロをテーマにした作品など。映画をもっと知るためには、食わず嫌いはいけないなと思ったんです。以前、井口昇監督の『デッド寿司』(2013年)に出演する際に、いくつか監督の過去の作品を観て、そのときは「ものすごいものを観てしまった!」という感覚だったのですけど、エンターテイメントとしては素晴らしいとも感じたし、こういう表現も大切なんだって気付くことができました。3年前くらいに、エロをテーマにしたとある映画を観たのですが、それは初っぱなからセックスシーンの連発で、かなり衝撃的でした。自分が実際にそういうシーンに挑戦するかどうかは別として、映画を観ることは経験につながるものだと思うし、そういう作品の情緒を知ることは、演技をする上でも大切だと思うので、幅広い作品を観たいと思っています。

——人間の綺麗なところだけじゃなくて、生々しい部分や、薄暗い欲望にも目を向けていきたい、と。

武田:そうですね。わたし自身、少年っぽいところがあって、本当は『グーニーズ』とか『スタンド・バイ・ミー』みたいな、子供心をくすぐられる作品が好きなんですけれど、映画が表現できることはもっとたくさんありますから。たとえば今回の「夢の寿命」にだって、咲が心に抑え込んでいる欲望を表現するシーンもあります。そうした表現は、今後さらに追求したいな、と。アクションにはもちろん、これからもたくさん挑戦していきたいけれど、それだけではない、奥行きのある演技ができる女優を目指したいです。

(取材・文=松田広宣/写真=竹内洋平)

■公開情報
『TOKYO CITY GIRL』
9月5日(土)角川シネマ新宿他全国順次公開。
監督:山田能龍、藤井道人、志真健太郎、原廣利、山田智和、山口健人
出演:武田梨奈、青山美郷、田中美晴、三浦萌、比嘉梨乃、遠谷比芽子、塚地武雅、前田公輝、小島よしお、高橋健介、蘭次、川村亮介、小西キス、栗原英雄、土佐和成、浅見千代子
配給:アークエンタテインメント
上映時間: 100分
(C)2015 TOKYO CITY GIRL
公式サイト

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