酔いつぶれた女子大生を拾ったら? コミカルな掛け合いが描かれる百合漫画『TAKE HOME ME』
物語の冒頭と結末で、立場がまったく逆転する構成には、読み終えた後に思わず膝を打ちたくなるような心地よさがある。Xに投稿された漫画『TAKE HOME ME』は、そんな展開が巧みに機能しているだけでなく、思わずニヤニヤしてしまう登場人物の掛け合いにも注目したくなる作品だ。作者の椎名かじんさん(@kajinshina)に、ストーリーの作り方などについて話を聞いた。(望月悠木)
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「勢いだけで漫画を描いています」
――なぜ『TAKE HOME ME』を制作したのですか?
椎名:年4回開催されている『コミティア』というオリジナル作品限定の同人誌即売会に参加しており、毎回そちらに合わせて作品づくりをしています。基本的に3ヶ月に1作品のペースで制作しているのですが、この時は事前に考えていた話がうまくまとまらず、新刊は諦めようかと思っていた矢先にパッと思いつき、急遽勢いで描いた物語でした。普段でしたらネタ出しに1ヶ月、ネームに1ヶ月、執筆に1ヶ月くらいかけるところ、イベントに間に合うよう、すべて込みで1ヶ月程度で完成させました。
――「酔いつぶれている女性を“お持ち帰り”する」というところから始まる内容でしたね。
椎名:飲み会シーズンに道端で酔い潰れている人を見かけて「危ないな」と思うことはありましたが、自分がアクションを起こしたことは一度もありませんでした。「そこでアクションを起こしたら?」「それが女性同士だった場合は?」と思い立って描き始めました。
――冒頭では酔った葉子をとも子がお持ち帰りし、ラストでは酔ったとも子を葉子がお持ち帰りするという逆の展開になっている点に、巧みさを感じました。
椎名:私は1ページ目から話を描き始め、そのページを楽しく描けて筆が乗ったら、続きのページをどんどん描いていくスタイルです。描き進められた結果、今回のラストに至ったという感じです。つまり、勢いだけで漫画を描いています。
――百合作品ではありますが、とも子の同僚という男性キャラクターも登場しましたね。
椎名:私は割と作品に男キャラを出します。それは、物語が閉塞的な場所ではないことを示すためですが、どの作品でもそこそこイケメンで良い奴に描いています。主人公には「ろくな男にしか出会わなかったから女性を好きになった」のではなく、「どんなイケメンよりも、物語の中で出会った女性に惹かれて好きになってほしい」と思っています。
――とも子と葉子の掛け合いが魅力的で、印象に残りました。
椎名:お互い初対面で、とも子はもともとノンケ、葉子は他に好きな人がいる状態からのスタートなので、お互いに自分のポジションを探りながら話が進んでいく感じになりました。互いに相手をノンケだと思っているから一線があり、それでも気が合ってどんどん相手に惹かれていく感じが出せていたら嬉しいです。
――椎名さんの作品では、メインキャラクターの名前が「とも子」と「葉子」であることが多いですが、本作のとも子と葉子を描くうえで意識したことはありますか?
椎名:名前はただの使い回しなので、あまり意識していることはないです。ただ、キャラの差別化のため、だいたいどちらかがショートカット、どちらかがロングヘアになります。そのため、髪の短い普通な感じの子がとも子、髪の長いちょっと美人な子が葉子になります。
――今後の漫画制作について、予定などを教えてください。
椎名:今は社会人と大学生の百合カップルの話を描いています。最初は1話完結で、出逢いから付き合うまでの話を描いたのですが、キャラが気に入ったので続編を描いたら、思いのほか続いて、今は18話目になっています。
いろいろなところに出掛けるのがメインの話ですが、指輪を作ったり、家族にカミングアウトすることになったりと、少しずつですが着実に物語が進んでいます。今後も筆を止めずに2人の行く末を描けたらと思っているので、ぜひ読んでもらえたら嬉しいです。