【漫画】古びたアパートでの同居生活、何が楽しい? サイレント漫画『アパート』のラストに感動

 アパートで同居する2人は、他愛もない日常を穏やかに過ごす。しかし、徐々に片方の生活が変化していくと……。

 人生の変化を描く優しいサイレント漫画『アパート』が、Xにアップされた。今回は作者である星殻子(@ste11acr0w_0572)氏に、本作のテーマや作品を通してのこだわりについて、話を聞く。(青木圭介)

続きを読むには画像をクリック

『アパート』(星殻子)


ーー本作のテーマを教えてください。

星殻子:本作は、好きだった場所がなくなってしまう悲しさ、切なさを表現したくて、描いた作品です。例えば、好きだった空き地に家が建ってしまって、カエルの声が聞こえなくなってしまうとか。実際に私自身も、変化に悲しむ経験をコロナ禍にしました。親や祖父に連れて行ってもらっていた本屋さんが、コロナ禍で客足が遠のき閉店してしまったんです。そういった出来事の悲しさを、自分のなかでどうやって消化するかみたいなことを考えながら、創作しました。

 また、バンドのスピッツが好きで、スピッツに「アパート」という曲があるんです。その歌い出しが、「君のアパートは今はもうない」なんですよね。曲に沿って描いてるとかではないんですけど、描いていたときも聴いていたこの曲も、本作を描き始めたきっかけの1つです。

ーー作品を通して、「“思い出の場所”がなくなってしまう」以外の変化も印象的でした。

星殻子:元々は同じ時間を過ごしていた2人だけど、頑張って活動をするなかで、黒髪の子の生活はどんどん漫画を描くことが中心になっていってしまう。でももう1人の子は、やっぱり2人でもっと一緒にいたかったんだと思います。場所の変化とともに、関係性や環境の変化も描きたかったんです。

ーーセリフを入れずに本作を描いた理由は?

星殻子:本作は設定を思いついて描き始めた頃から、サイレントで描くと決めていた作品でした。セリフを使わずに漫画を描く技術を身に付けたくて、表情などにこだわりながら描きました。

ーー実際にセリフを使わずに漫画を描くなかで、意識したことはありますか?

星殻子:セリフがなくても描写が伝わるように、できる限り緻密に描くように意識しました。例えば2人が各季節を一緒に過ごしていることがわかるシーンなんかでは、スイカや扇風機を描くなど、状況が伝わる小物なんかも細かく描いています。

あと、決めの場面のセリフは、読んでいただいた方に委ねられる表現にすることにもこだわっています。ある程度私の方で伝えたいことや想定している意味合いはあっても、何を言っているかは読み手によって変わる形にできたらと思い、叫ぶシーンなんかは描いていました。

ーー本作のなかで、星殻子氏自身が気に入っているポイントを教えてください。

星殻子:先ほども挙げたシーンなんですけど、2人の日常をそれぞれの季節で描いているシーンが好きです。時間経過のなかの2人を描きたいと、描き始めたときから思っていたので気に入っています。ちまちました物を描くのが好きで、小物をたくさん描けたのもよかったですね。

ーー星殻子氏が本格的に漫画を描き始めたきっかけは?

星殻子:子供の頃は絵というより、工作全般が好きでした。それが学校で美術部に入るとかに繋がったんですけど、1番の転機は高校で漫画研究部に入部したことですね。その漫画研究部が結構本格的で、2年生になると印刷所に依頼して、製本までするようなところでした。その活動がすごく楽しかったり、憧れるような絵を描く同級生に出会ったり、そこから本格的に漫画を描くようになったと思います。

ーー最後に、漫画家としての今後の展望を教えてください。

星殻子:最近になってきちんと漫画家志望を名乗り始めたので、これから色々なところに持ち込みをしていきたいなと思っています。ジャンルとしては、生活のなかの小さい動作とかに焦点を当てた、日常系のような作品を描いていきたいです。

関連記事