『HUNTER×HUNTER』なぜキャラが爆増した? 冨樫義博の“創作意図”を読む

 冨樫義博の人気漫画『HUNTER×HUNTER』の最新話が、2026年6月29日発売の「週刊少年ジャンプ」31号に掲載される。2024年12月9日の第410話以来、約1年半ぶりの掲載となる。これに伴い、約2年ぶりとなるコミックス最新39巻も7月3日に発売される。すでに「少年ジャンプ編集部」から発表されている通り、従来の週刊連載形式という枠組みではないため、公式の告知では「連載再開」ではなく「掲載」という表現が用いられている。

 本作はこれまでも多彩なエピソードを展開してきたが、「暗黒大陸編」に突入して以降、物語の難解さが際立つようになった。ここで改めてこれまでの展開をおさらいしておきたい。この新章、ならびにその中で進行中の「王位継承戦」は、時に小説とも称される膨大な文字量や、一筋縄ではいかない複雑な利害関係が特徴だ。何よりも、登場キャラクターの激増が読解のハードルを大きく上げている。

 本編においてまず特筆すべきが、本作の主人公であるゴンは現在、念能力を失い療養中。盟友のキルアも妹と旅に出ており不在である。代わって物語の中心となっているのがクラピカで、ハンター協会側から協力要請を受けて行動している。

 世界観のスケールも劇的に変貌を遂げた。かつてゴンたちが冒険を繰り広げていた世界は、実は広大な世界のほんの一部を占める巨大な湖の中の島に過ぎなかったという設定が明かされている。舞台は、その外側に広がる人類未踏の危険領域「暗黒大陸」へと向かうカキン王国の大型客船「ブラックホエール1号」の密室が舞台だ。

 この船内では、複数の重大な対立軸が同時に進行し、絡み合っている。大元にあるのは、ネテロ元会長の息子、ビヨンド・ネテロの目的と、彼を監視・阻止しようとするハンター協会との攻防だ。そこに、同胞の仇に接近して「緋の目」を取り戻そうとするクラピカの個人的な目的が重なる。さらに、因縁の決着をつけるべく船内に潜入したヒソカと、それを追う幻影旅団の追跡劇も展開中だ。

 また、この構図をさらに複雑化させているのが、船内で行われているカキン王国の王位継承戦である。14人の王子とその配下たちが、最後の1人になるまで殺し合いを繰り広げるサバイバルに巻き込まれる形で、クラピカは最下位の第14王子の警護を任された。船の下層では、それぞれの王子と結びついたマフィア同士による血生臭い縄張り争いと抗争まで勃発している状況だ。

 本作の群像劇としての側面には、作者の明確な創作意図が反映されている。冨樫氏は過去のインタビューにて、大量のキャラクターが登場するスポーツ漫画の金字塔である『キャプテン翼』を例に挙げ、大人数の登場人物が複雑に絡み合うジャンプ史上最大のドラマを描きたいという趣旨の展望を語っていた。作中の展開はその言葉を具現化したものであり、名前を持つ膨大なキャラクターたちが、それぞれの目的、ルール、信条に従って自律的に行動している。

 読者に対して時に不親切でありながらも、安易な妥協を一切許さない緻密なプロット構築こそが、本作が長年にわたり支持を集め続ける理由だろう。張り巡らされた無数の伏線がどのような結末へ向かうのか。最新39巻と合わせて、再び幕を開けるハンターたちの戦いを見守ってみてはいかがだろうか。

関連記事