5月より連載中のLINEマンガのオリジナル作品『再生魔法が効きすぎた！　人生やり直したら、王様になった元部下に溺愛されています』（原作：クレイン／制作：MUGEN FACTORY）が、早くも多くのファンを獲得している。それもそのはず、＜可愛い部下が最強一途なスパダリ国王に!?　年齢逆転×溺愛ファンタジー！＞という公式のキャッチコピーからもわかるように、現在のトレンドにあったフックのある物語であるとともに、それだけではない多面的な魅力を備えた“最強のロマンス・ファンタジー”だからだ。まずはプロローグを読んでほしい。

『再生魔法が効きすぎた！』プロローグを読む

母の命と引き換えに生まれてきた、アルヴェーン伯爵家の令嬢・パトリシアは、家の人間に疎まれ、優雅な貴族社会とはかけ離れた悲惨な日々を過ごしていた。13歳になった彼女は、ついに伯爵家を飛び出して実力主義の国軍へ。魔法騎士隊で頭角を表すなかで、妾腹の子として家族から冷遇されてきた第三王子・テオヴァルド（テオ）を部下として迎え入れることになりーー。

　序盤から心を惹かれるのは、読者が思わず憤慨するほど理不尽な環境にあって、パトリシアがただ“かわいそう”な印象ではなく、理知的で芯のある女性に育っていることだ。家を出る時、彼女が父＝伯爵に対してタンカを切るシーンは痛快そのもの。そして、愛を知らずに育ちながら、きっと無意識に愛情を注ぐべき相手を探していたパトリシアは、自分と同じ境遇の第三王子・テオと出会うことになる。王族に疎まれ、軍に追いやられたテオは当初、“ふてくされた少年”だったが、いつしか厳しくも愛のあるパトリシアにすっかり懐いていた。しかし、伯爵令嬢と王族とは思えない、つつましい幸福を二人が享受する時間は長く続かなかったのだ。

　魔法騎士隊には、自然と魔力の高い貴族の子息が多く集まるため、よほどのことがない限り前線で戦うことはない。しかしある日、パトリシアに“無策”としか思えない国王の命令が下される。隣国の国境警備隊を駆逐し、その国土を侵略するーーそれは「死んでこい」と言われるに等しい作戦だった。そう、王太子の母＝王妃が、魔法騎士として着実に成長しているテオを謀殺し、あわよくば「王族の死」によって戦争を正当化しようと、前線に送り込むことを画策したのだ。この決定に抗う術はなく、パトリシアは戦地でテオをかばい、凶弾に倒れてしまう。死の間際、最後まで可愛い部下を思いやるパトリシアに対し、テオは秘めた思いを伝え、すべての魔力を込めて“ある魔法”を使うのだった。

　ここからは実際に本編を読んでもらいたいところだが、死んだはずのパトリシアは戦場で保護された孤児として、子どもの姿で目覚めることに。戸惑いながらも本名は隠し、「パティ」と名乗って、孤児院で働く日々を送っていたが、「パトリシアに瓜二つの娘」としてアルヴェーン伯爵家に引き取られる。そこでどんな生活が待ち受けているか……は読んでのお楽しみとして、タイトルにもある「王様になった元部下」＝テオとの再会が、序盤のハイライトだ。テオはパトリシアの面影を追い、「パティ」を王宮に迎え入れる。

　テオはパトリシアと冗談めかして語り合っていた「王になる」という未来をその手に掴み、驚異的な力で王族を一掃した“冷酷な簒奪者”として恐れられていた。彼は“魔法”が失敗に終わり、パトリシアを救えなかったと思い込んでいるようで、安易に正体を明かすことができない「パティ」との微妙な関係が描かれていく。そんななかで、容姿も財力も戦闘力も超一級品の見紛うことなき“スパダリ”であるテオが、不器用にパティを溺愛していく様子がいとおしい。照れるとすぐに耳が赤くなってしまうーーそれも、“元上司”だからこそわかる“最恐の王”の本当の姿だ。

　そんな魅力的な二人にキュンキュンするのが本作の醍醐味だが、“年齢逆転＆溺愛”という設定が見事に生きているのは、作者・クレイン氏の真骨頂だ。すでに『ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない』（竹書房）というヒット作があり、ファンの期待に応える一作でもある。同時に、冒頭でも述べたように、元王太后と“内通者”が暗躍する宮廷ドラマ／サスペンスとしても、不遇だった二人が幸福を掴むリベンジの物語としても楽しむことができ、ジャンルにとらわれず何度でもおいしい作品なのだ。

　すでに多くのファンに愛されている本作は8月10日にシーズン1が幕を閉じ、8月17日にシーズン2が開幕したばかりで、初めて触れる人も読み始めるのに最適のタイミングだ。思いのままに一気読みして、毎週の楽しみにしよう。

『再生魔法が効きすぎた！　人生やり直したら、王様になった元部下に溺愛されています』
作品URL：https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0003638
コピーライト：©Crane・MUGEN FACTORY/LINE Digital Frontier