【漫画】中二病少女の意外な一面に胸キュン！？ 岡本太郎の名作をモチーフにした百合漫画『恋する名画』
絵画はもっと気軽に楽しんで良い？
――まず『恋する名画』シリーズを制作した背景をお聞かせください。
みもと：美術館や博物館に行くことが好きで、よく足を運ぶのですが、人に趣味を聞かれた時にそれを言うと「どうやって鑑賞したらいいかわからないから私には無理だ…」という反応をもらうことがあります。だから、「こういう妄想のような作品鑑賞のやり方もアリだと思うし、もっと気軽に観てもいいのでは？」ということを伝えたくて制作しました。
――『クラスのイタイあいつの可愛いところを見てしまった』の世界観や設定は、どのように決めていきましたか？
みもと：モチーフにした『傷ましき腕』に描かれている少女が、痛々しい腕をしながら拳を握りしめ、頭に大きなリボンをつけて、自分の存在が消されないように反発しているように見えました。なので、学校という閉鎖的で同調圧力の強い空間で、孤独ながらも自分を貫く女の子を描こうと思いました。
――ちなみに、岡本太郎の『傷ましき腕』をモチーフにした理由は？
みもと：まず岡本太郎の作品が好きだったので、「何か一つはモチーフにして描こう」と思っていました。その中で『傷ましき腕』を選んだ理由は、少女が描かれていることと、青春の苦悩や葛藤を落とし込むのに最適だと思ったからです。
――設定やモチーフが決まり、ストーリーはどのように膨らませていったのですか？
みもと：『恋する名画』全般に言えることですが、ストーリーはモチーフにする絵画を決めた後、作品が作られた経緯や画家の経歴、時代背景などを調べて、なるべく作品に落とし込むようにしています。『傷ましき腕』は岡本太郎の初期作品で、新しい芸術表現への挑戦と不安、異国での孤独感の中で描かれたとされています。苦悩や葛藤の中、それらに反発するエネルギーを持って立ち向かおうとする気迫がこの作品には込められているので、そこが出せたらいいなと思いながら制作しました。
自分の意識が変わる瞬間を描きたい
――印象的なビジュアルの九重ですが、キャラデザで意識したことは？
みもと：『傷ましき腕』に描かれている少女がリボンをつけて腕に包帯をしていたので、「イラストに起こすと中二病っぽさが出そう」と思い、そこに眼帯やフリルのついたブラウスを足してイタイ感じにしました。また、柏木とのギャップが欲しかったので、女の子らしさや丸さを意識しました。
――一方、九重の想い人である柏木は？
みもと：柏木は九重と対照的な感じにしようと、ショートヘアにしたり目元をすっきりさせたりとデザインしました。
――恋まじないを見られた時の九重の照れた表情が最高でした。
みもと：そのカットは「得意ではなかった相手の印象が180度変わるような表情」を意識して描きました。
――また、『傷ましき腕』をモチーフにしたカットも、重厚感のあるインパクト十分なシーンでしたね。
みもと：なるべく元の絵画のタッチが伝わるように心がけました。登場人物の服装やデザインは漫画用に変更していますが、モチーフの印象は変えたくなかったので、図録や資料をよく見ながら時間をかけて描きました。
――主人公が傍観者として二人のカップリングを見守る立ち位置でした。あくまで主人公が恋愛に関与しないポジションにした狙いは？
みもと：人が何かに一生懸命である姿はすごく魅力的だと思っていて、「それに触発されて自分の意識が変わる」というのを描きたかったからです。恋の顛末までは描いていないので、「どこかで恋愛に発展していてもいいかな」とは思います。
――だから九重の想いを知って、主人公が前向きになる展開だったのですね。
みもと：他人からの好意というのはすごく強いパワーを持っていて、人を惹きつけることもあるし、それに対応できない人もいるのではないかと思います。『恋する名画』は短編集で、「さまざまな舞台・設定のストーリーを入れたい」と思っていたので、そういった側のお話もあっていいのではないかと思って描きました。
――最後に、今後の漫画制作の予定など教えてください。
みもと：現在はカドコミ（KADOKAWA）で『百合のはじまりは奴隷から』（原作：デス山ハナ子 漫画：みもと）を連載しています。『恋する名画』とは打って変わってコメディな感じですが、先述した通り「人が何かに一生懸命である姿はすごく魅力的」であることが伝わるように描くことを意識しています。こちらもぜひ読んでいただきたいです。
©みもと／KADOKAWA
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■『恋する名画』試し読み：https://comic-walker.com/detail/KC_002738_S?episodeType=comics
■『百合のはじまりは奴隷から』第1話：https://comic-walker.com/detail/KC_005678_S?episodeType=first
