『AKIRA』『攻殻機動隊』に次ぐ新時代の名作SF漫画に!? 新作怪獣マンガ『怪獣カムイ』に高まる期待

 7月8日に発売された『週刊ヤングマガジン』32号(講談社)にて、『怪獣カムイ』というタイトルの新連載が始まった。地球規模の壮大なスケールで繰り広げられる“怪獣”の物語に、大きな注目が集まっている。

 『怪獣カムイ』の作者は、『地球から来たエイリアン』や『四ツ谷十三式新世界遭難実験』などを手掛けてきた有馬慎太郎。架空の生き物を描き出すことを得意としている漫画家だが、今作では地球を襲う“巨大生物”という形でそのイマジネーションを駆使している。

  物語は謎の巨大生物「震土」が日本に襲い掛かり、核爆弾によって退治されたところから始まる。難を逃れたように見えた人類だったが、それから5年後、世界各地にて続々と巨大生物が現れ始めるのだった。

  主人公の獅堂大和は部下から厚い信頼を寄せられている自衛隊員で、神経接続によって兵器を自分の身体のように操る「接続手」と呼ばれる存在。ある日突如として日本に現れた怪獣を倒すため、部隊総出で出陣するも、結果は惨敗に終わってしまう。しかしその操縦技術を見込まれた大和は、驚くべき新兵器「神威」のパイロットに選ばれる……。

 まず同作の大きな魅力となっているのが、巨大怪獣たちのデザイン。ひたすらに不気味で威圧感に満ちている一方、合理性を感じさせるようなフォルムとなっており、作者のデザインセンスが光っている。

 また1話目にして主人公が絶望に叩き落とされるスリリングなストーリー展開や、「神経接続操作システム」といった用語が飛び出すSF的な世界観もセンス抜群だ。ちなみに講談社の『マガジンポケット』(マガポケ)公式Xでは、同作の紹介文として大友克洋の『AKIRA』と士郎正宗の『攻殻機動隊』に次ぐ「新時代の極大スケールSF」と評されている。

独創的な作品が次々と生まれる“怪獣マンガ”の世界

 ひと昔前には“怪獣マンガ”は間違いなくマニアックなジャンルだったが、ここ最近ではさまざまな出版社が手を付け始めている。その嚆矢となった作品といえばやはり、『少年ジャンプ+』で異例の大ヒットを叩き出し、TVアニメ化もされた松本直也の『怪獣8号』だろうか。

  また『月刊ヤングマガジン』(講談社)では、2023年6月よりKENTによる『大怪獣ゲァーチマ』が連載中。同作は港町・匡波町を襲ったゲァーチマという怪獣をめぐる物語で、怪獣の存在が観光資源となり、“豊穣の神”として崇拝されているという独特の世界観が見どころとなっている。

  ほかにもさまざまな怪獣マンガが生まれているが、決して似たり寄ったりな設定ではなく、作家ごとにひとひねりを加えているのが特徴だ。たとえば『マンガワン』と『裏サンデー』で連載されているヨシアキの『雷雷雷』は、『まんがタイムきらら』的な日常系の空気感を盛り込んだ“ガール・ミーツ・エイリアン”の物語。少女たちのゆるい掛け合いを挟みつつ、スリルに満ちた「害獣」との戦いが描かれている。

  他方で2月より『ヤングチャンピオン』(秋田書店)で連載されている『戦国怪獣記ライゴラ』は、怪獣マンガでありながら、壮大なスケールで描き出される歴史マンガでもある。1555年の厳島にて、合戦の最中に突如として巨大な怪獣が乱入するという斬新な設定が魅力だ。

  そんな昨今の怪獣マンガと比べてみると、『怪獣カムイ』は濃厚なSF要素を入れることによって他作品との差別化を図っているようにも見える。まだ連載は始まったばかりだが、この先に待ち受けている展開に期待せざるを得ない。

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