橘ケンチ×岡田武史×ラモス瑠偉、サッカーで育む主体性とフェアプレーの精神 『EXILE CUP』から『W杯』に繋ぐ子どもたちの夢
LDHが主催する小学校4年生から6年生までを対象としたフットサルの全国大会『EXILE CUP』。その決勝大会が9月20日に愛媛県今治で開催された。リアルサウンドでは大会を初期から支える橘ケンチ、岡田武史氏に加え、2年ぶりに参加したラモス瑠偉を交えた座談会を実施。昨年から本格始動したガールズリーグの手応えや、『2026 FIFAワールドカップ』(以下、『W杯』)を通じて改めて考えるフェアプレーの精神、地域との連携を含めた大会の今後の展望などを語ってもらった。(編集部)
「女の子たちにも夢を叶える場所を作りたい」ガールズリーグへの想い
――2010年からスタートした『EXILE CUP』も今回で14回目、ここアシックス里山スタジアムで決勝大会が行われるのは、今回が4回目となります。まずは、今日の決勝大会の感想から、それぞれひと言ずつお願いします。
橘ケンチ(以下、ケンチ):まずは、天候に恵まれて本当に良かったです。6月末に徳島で行われた地区予選のときも台風の影響で飛行機が飛ばなくて、急遽僕が参加できなくなったりとか、今年は例年になく天候に左右されたような印象があって。そういうリスクを改めて感じた一年だったので、こうして決勝大会を迎えることができて、まずはホッとしているのが正直なところです。
ラモス瑠偉(以下、ラモス):私は一年ぐらい休ませていただいて、ここに来るのは2年ぶりなんですけど、やっぱり今治の決勝大会は雰囲気がめちゃめちゃいいですよね。天候にも恵まれたし、芝生の状態もすごくいい。今日参加した子どもたちは、すごく恵まれているんじゃないかな。あと個人的には、岡田さんをはじめスタッフとかコーチたちとか、結構久しぶりに会えた人たちも多かったので、とにかく最高でした。
岡田武史(以下、岡田):今回の大会に関しては、あまりの暑さで予選大会がひとつ中止になったりとか、いろいろ予定外のことがあって。ケンチさんも言っていたけど、そういう中でよくぞ決勝大会までたどり着けたなっていうのが、正直な感想ですよね。まあ今年は、いろいろと大変でした(笑)。
――決勝大会の試合自体は、いかがでしたか。去年、試験的に開催された「ガールズリーグ」は、今年も継続して開催されましたが……。
ケンチ:オープンリーグのほうは年々レベルが上がっていて、どのチームの子たちもすごく上手くて、試合自体もすごく面白いものになっていると思うんですけど、それに加えて女子チームだけが参加するガールズリーグっていうのを去年から始めて。去年は本当、トライアル的な感じで始めたんですけど、参加してくれた子どもたちはもちろん、関係者たちのリアクションもすごく良かったんですよね。オープンリーグに参加しているチームで、女の子が入っているチームもあるんですけど、女の子たちだけでやっている良さもやっぱりあるなって思って。今回も見応えのある試合がすごく多かったじゃないですか。
ラモス:今回優勝したファナティコスガールズは特に、すごくいいチームだったよね。あの子たちの将来が楽しみだよ。
岡田:あのチームはホント強かったけど、もともと女子だけのチームなの? それとも男子もいるチームで、女子だけを集めてチームを作ってきたのかな?
ケンチ:ファナティコスは男子が中心のチームもあるようですけど、チームによっては、女子だけでやっているところも多いみたいです。今回は来てないですけど、去年優勝した福井の丸岡RUCKとかは上のカテゴリーも含めて、女子だけのフットサルクラブで……あのエリア自体、女子のフットサルが結構盛んな地域みたいです。
――さすがに詳しいですね……。
ケンチ:全国の予選を回っていますから(笑)。そもそも『EXILE CUP』自体、「子どもたちに夢を」というテーマでやっているので、男の子たちだけではなく、女の子たちにも、夢を叶える場所、夢を描ける場所を作りたいなっていうのがあるんですよね。だから来年以降も、規模はまだちょっとわからないですけど、継続してやっていきたいなって思っています。
『W杯』を通じて考えるフェアプレーと相手をリスペクトする重要性
――今おっしゃったように、ケンチさんは春先から初夏にかけて全国で行われた予選大会にも精力的に参加されていましたが、今年は『W杯』の年でもありました。そのへんの影響って、子どもたちから見て取れましたか?
ケンチ:そうですね……目に見えてどうこうっていう感じではないですけど、『W杯』のことは、子どもたちもよく話題にしていました。というか、世の中的にも、すごく盛り上がっていたじゃないですか。やっぱり、日本代表が本当に強くなったんだなっていうのは、僕自身も感じていて……子どもたちが夢見る舞台として、『W杯』っていうのはすごく大きいじゃないですか。
ラモス:私もいくつか予選大会を見に行きましたけど、子どもたちも『W杯』の話をしていましたよ。今、ケンチさんが言ったように、日本代表がホント強くなったから。子どもたちもすごく楽しみにしていて。
――2019年の『EXILE CUP』に出場したあと、ガンバ大阪でプロ選手になった荒木琉偉選手もそうですが、日本代表に選出されるような選手もいて、『EXILE CUP』の出場者たちのその後の活躍もだいぶ輝かしいものになっていて。ただ、『W杯』と言えば、今回の大会に関して岡田さんは、いろいろと思うところがあったようで……。
岡田:そうだよ。昨日もサッカー協会の理事会でレフェリーに対するリスペクトの話が出てきたけど、『W杯』に出場しているようなトップ選手たちがレフェリーに対するリスペクトの姿勢をちゃんと見せないと、一般の人たちがそれを真似するんだよね。下の世代――ユースの試合とかは、ユースの子たちがレフェリーをやったりするんだけど、保護者とかコーチからきつい言葉をかけられたりすることがあって。それは非常に良くないというか、レフェリーをやる人がいなくなってしまうし、そういうのってスポーツのいちばん大事なところじゃないですか。レフェリーをリスペクトしながらちゃんとルールに従ってプレーするっていう。まあ、FIFAは全然ルールを守らないんだけど……。
――(苦笑)。
岡田:やっぱりさ、世界情勢的にも強ければいいみたいな、エゴが丸出しになっているような中で、スポーツの世界だけは高潔性を保たなきゃいけないと思うんだよね。そう、元ラグビー日本代表監督の大西鐵之祐さんが書いた『闘争の倫理 スポーツの本源を問う』という本があるんだけど、その中で大西さんは、人間は戦争をやる生き物である。戦争に行って、仲間が殺されたら、理性のタガが外れて、相手を殺してしまう獣なんだってことを書いていて。けれども、スポーツにはルールがある。だから、そこでグッとこらえることができるし、それが理性のタガを外さないトレーニングになるんだってことを書いていて。スポーツというのは本来そういうものなのに、FIFAは平気でルールを曲げているじゃないですか。それはやっぱり良くないというか、あのラモスだって今は、「マナーを守って、フェアプレーの精神でやりましょう」って、子どもたちに言っているわけで……。
――開会式で、子どもたちに言っていましたね(笑)。
ラモス:いやいや。私も成長しましたよ。岡田さんに厳しく指導されて(笑)。やっぱりフェアプレーの精神、あとレフェリーをリスペクトする気持ちはすごく大事だと思う。特に子どもたちにとっては。自分と自分のチームだけじゃなくて、相手がいて、審判がいて、初めてサッカーが成立するわけで……そこはリスペクトしないとダメだよ。そう、これは『EXILE CUP』の話じゃないけど、試合後に握手をしない選手がたまにいて。それをコーチが黙って見ている。それはダメだよ。だから私は、試合が終わったら、リスペクトを持って相手チームにあいさつしなさいよと言って。やっぱり礼儀は大事だよ。
岡田:やっぱりそういうのはすごく大事だと思うし、『EXILE CUP』はそのへんのことを今後もちゃんとやっていきたいよね。開会式で子どもたちの代表が宣誓とかしてもいいんじゃない? 「今日、私たちは、レフェリーをリスペクトしながら、全力でプレーします」って。
ケンチ:あ、それはいいですね。試合の前に主催者側からあいさつをするじゃないですか。そのときに選手のほうからも、宣誓をお願いしますって言って……。
――子どもたちが、主体性をもって関わる機会があるのは、すごくいいですよね。
ケンチ:そう。予選大会とかでも、まずは僕らのほうからあいさつをするんですけど、どうしても僕らのほうから子どもたちに投げかけるようなイメージで……その反応が地域によって、結構マチマチだったりするんですよね。全体的に子どもたちが大人しくなっているような印象もあって。だからそうやって、子どもたちが自主性を発揮する場があるのはすごくいいことだと思います。