Kroi、第7部『ジョジョ』OP主題歌「SPIN」の制作背景を明かす 荒野と映画愛、密度の高い音像の探求
西部劇の美学とファンクが融合した「SPIN」
――「SPIN」には、エンニオ・モリコーネの映画音楽を思わせるフレーズやコーラスもありますね。今回、制作側からサウンドの要望はあったのでしょうか?
内田:ほとんどなかったです。僕らには「Funky GUNSLINGER」という曲があって、エンニオ・モリコーネ的な、「これを聴いたら西部劇だよな」と思うサウンドトラックの音に、好きなファンクやソウル、育ってきたJ-POPを織り交ぜることを、だいぶ前にやっていたんです。今回はそのアップデート版、完全版みたいなものを作りたくて。西部劇をがっつり感じさせるギターを入れることは、最初から決めていました。
まずデモを作ってメンバーに聴いてもらい、制作側にも一度聴いていただいて。この方向で大丈夫かを確認したうえで、さらに手を加えて、やり取りしながら作っていきました。
――アレンジでは、どんなところにこだわりましたか?
長谷部:アニメの尺からフルサイズにしていくときに、ギターソロを入れたくて、曲の真ん中にセクションを作りました。西部劇って、弾を込める場面などで一度静かになるじゃないですか。『ジョジョ』にも、戦いの前にキャンプをして、一瞬日常に戻るような場面がある。そういう緩急をつけたいと思ったんです。
関:あの部分は、最初に益田が鍵盤のフレーズを持ち寄ったんですよ。悠生もギターソロを入れる場所が欲しいと言っていて。個人的には、最初は「急な展開だな」と思ったんですけど、そこに悠生の得意なウエスタン感のあるソロが入ると、上手く溶け込んだ。結果的に、すごく緩急がついたと思います。
――あのギターの音色は、どのように作ったのでしょうか?
長谷部:エフェクターというより、モズライトを使ったことが大きいですね。The Venturesなどが使っていたギターで、サーフロックやウエスタンを感じさせるキャラクターがあるので。
内田:スプリングリバーブや、アメリカ製のアンプに突っ込んだような歪みとか、はっきりしたサウンドイメージがあるんですよ。それと現代的な音とのバランスを探っていた気がします。バッキングにはアコギも入っていますね。やっぱりカントリー感が出るので。
関:悠生がウエスタンの要素を担ってくれることはわかっていたので、ベースは割とハイファイな音にしました。アニメのオープニングとしての壮大さや迫力を出す方向ですね。僕までいなたい音に寄せると、曲全体がそっちに傾いてしまうので、そこは割り切りました。その役割の違いが、音にも出ていると思います。
千葉:僕はアニソンとして勢いを出したかったので、今回は電子ピアノを使っています。余分な反響がなく、響きがソリッドだから、アタック感や勢いを出すのに向いているんです。こういう音数の多い曲でアコースティックピアノを使うと、豊かな響きがかえって曲全体を濁らせてしまうこともある。最近はアコピと電子ピアノをフラットに捉えて、曲の方向性に合わせて選ぶようにしています。ほかにはオルガンを入れたり、間奏のシーケンスを組んだりしました。
――終盤でテンポが落ちて、景色が大きく変わる展開もいいですね。
内田:どうしても、もうワンアイデアを入れて終わりたかったんです。普段は「蛇足になるかな」とやめることもあるんですけど、『ジョジョ』ってキャラクターが増えるたびに、ストーリーがぐにゃぐにゃ曲がっていくじゃないですか。すごくファンタジーなのに、「新しい人が出てきたら、こうなっちゃうよね」と思わせる急展開やカオスがある。そこにリアルさを感じるんですよ。
だから曲にも、入れたいものをどんどん入れて、ファンタジーの中の混沌によってリアルさを出したかった。最後のセクションも、むしろ迷わず入れられました。ブラスは最後まで迷ったんですけど、それも「入れちゃえ」と。誰が主役かわからないくらい、いろんなものが入っています(笑)。
――ブラスも加わって、かなり密度の高いサウンドになっていますね。
内田:日本のアニメのオープニングには、これだけ音数が多くても、ひとつの曲として成立させる面白さがあると思うんです。そういう日本で育ってきた音楽のよさをしっかり入れつつ、海外の劇伴的なフレーズも入れる。めちゃくちゃなことになっている気もしますけど、それがこの作品に合うんじゃないかなと。
――最後のコーラスも、不思議な質感です。
内田:最後のコーラス自体は、僕がひとりで全部重ねて歌っています。ああいう発声を勉強したことはないので、さっき話した「完全には再現できていない部分」でもあるんですけど、それが好きなんですよ。『エル・トポ』みたいな(笑)。最後はしっかり壮大にして、エンディングを作りたかったんです。
『ジョジョ』は洋楽との親和性が高いし、僕らもそういう音を研究してきた。そのうえで、アニメのオープニングとして聴き応えがあって、ファンの皆さんにも喜んでもらえるものにしたかった。今回は、目指す方向がすごく明確に見えていましたね。
――歌詞については、制作側からどんなリクエストがありましたか?
内田:最終的なメッセージを、漢気のある感じにしてほしい、と。僕自身は漢気を前面に出して生きているわけではないので、そこはいつも以上に意識しました(笑)。作品の中、その時代に入り込んで、自分ならどう生きるかを考えるんですけど、最後はポジティブなところに着地させたい。言葉の締めくくり方を考えたり、「ここは自分のマイナスな部分が出ているな」と感じるところを削ったりしたのは、今までになかったかもしれません。
――〈まだあるフロンティアは内側〉という一節には、外へ進むだけでなく、自分の内面を探求する感覚もありますね。
内田:鉄道ができて開拓が進むにつれて、フロンティアスピリッツを持っていた人たちは、向かう先を失っていったんじゃないか、と考えたんです。そこで次に開拓する場所は、自分自身の内側にあったんじゃないか。そう考えると、自分にも重ねられるなと思って。
あと、作品の中では大陸を横断してレースに優勝するという目標があるけど、自分をその世界に当てはめると、探求したいものはもっと心の中にある。それを見つけてアウトプットするのが自分の目的なので、時代背景と作品と自分を、ぎゅっと重ねて書いていきました。
――音楽のスタイルは出尽くしたと言われても、自分を掘っていけば、まだ新しいものが生まれるかもしれない。そんな思いも込められているのかなと。
内田:そうですね。周りを見て「もう全部尽きちゃったな」と思っても、昔の自分が考えていたことや、生まれ育った場所にヒントがあったりする。そういうところに、まだまだ見つけられるものがあるんじゃないかと、少し考えてもらえたらと思います。