明日に確証などない時代だからこそ響く歌ーーAkiに聞く「唸るほどの熱」へ至った創作の思考

 「ドームで単独公演を成功させたい」「世界へ音楽を届けたい」。そんな大きな夢は、今のAkiの口からは出てこない。2024年1月から現在に至るまで音楽活動を続けてきた理由を聞けば、Akiは「たまたまだ」と答える。今を生きる。未来はわからない。だって、自分の手ですべてをコントロールできるわけではないから。何かが終わってしまったら、また何かを始めればいい。そんな刹那的、だけどしなやかさとも取れる感覚を歌うからこそ、Akiの音楽は、目まぐるしく変わり続ける今の時代を生きる人たちとリアルに共鳴するものになっているのだと思う。

 1stシングル「秘密の」が「Amazonプライム広告:アーバンジャングル」CMソングに起用され、その声の魅力に世の中が一気に振り向いた。そこから11作もの楽曲をリリースしてきた、シンガーソングライター・Aki。9月23日には、新曲「唸るほどの熱」を発表した。その楽曲と音楽活動の軸について聞いてみると、明日に確証などない日々をどう生きればいいのかという不安の影を拭って、微かな光を与えてくれるような会話になったのだ。(矢島由佳子)

「続けられる」ことへのコンプレックス、それでも音楽だけは続けられている理由

ーー社会から離れたいと思って音楽を作るようになったAkiさんにとって、今、音楽をやる理由はどこにあるのだろう、ということを最初に聞きたいなと思っていました。TikTokにアップしたオリジナル曲に反響があり、今のスタッフと出会って1stシングル「秘密の」をリリースしてから、2年半が経ちます。当時とは環境も心境も大きく変わっていると思うのですが、今「なぜ音楽をやりたいのか?」と聞かれると、どんな答えが浮かんできますか。

Aki:本当に、たまたまなんですよね。高校生のときに軽音楽部に入って、でも音楽で食べていけるわけがないと思っていましたし、そこから何年も経ったあとに趣味としてまた音楽を始めて、たまたま「1曲出してみないか」というふうに言ってもらって……ラッキー、って言うんですかね? 「秘密の」を出したときは、ありがたいと思いつつも、「これは最初で最後の、まぐれの、記念の1曲なんだ」くらいに思っていました。そこから「また曲を出せるよ」ということが、本当にたまたま、今も続いている感じなんですよね。

ーー新曲「唸るほどの熱」は〈今日もまた雲を/掴むような日々〉という歌詞で始まりますけど、Akiさんの音楽って、「明日に確証なんてないよね」みたいな空気が漂っていますよね。

Aki:本当にそうですね。その考えが、日に日に大きくなりました。

ーーその感覚が、今を生きる人たちに共鳴しているんじゃないかと思います。今の仕事や暮らしが1年後も同じように続いているかわからない、犠牲を払ってでもデカい夢に向かって突っ走るのは怖い、という感覚が、2026年の人たちのリアルだと思うから。Akiさんの「明日に確証なんてない」「雲を掴むような日々だ」といった歌は、今の時代の空気を的確に代弁してくれているなと思います。

Aki:いやあもう、私は時代なんて代弁できないです。私は自分自身を代弁することしかできなくて、すべての曲は自分のためだけに歌っているんですよ。わがままな曲ばっかりです。

ーー「誰かのために」「時代のために」みたいな姿勢で書いている音楽じゃないことも、もちろん感じています。自分のために作ったものが、自然と同時代の人と共鳴するというのは、すごく理想的な音楽の在り方じゃないですか。

Aki:自分が思いついた、自分の好きな世界だけを曲にして、最終的に、それを「面白い」って言う人たちにちょっと一緒に楽しんでいただけたら、みたいな感じですかね。

ーー究極の質問をしてしまうと、「今回のリリースで契約終了です」と言われたら、Akiさんはどう感じると思いますか? そのあとも音楽を続けます?

Aki:「しょうがない」。そこからまた何かが始まるのかもしれない。私が何か別のことをやりたいと思ったら、何かやればいいですしね。音楽を続けられる環境があるなら、またやるかもしれないですし。今の時代、レコード会社を通さずとも音楽を作って世に出せるので、そういう形で音楽を作るかもしれない……そこらへんは、本当に申し訳ないけど、何にも考えてないです。

ーー続けられなくなったあとのことは、そのときに考えればいいという考え方は、それまたいろんな人の心を軽くするんじゃないかなと思います。

Aki:計画を立てて、何事も起きずに生活できるのが一番いいですけどね。

ーーそうしたいと思って真面目に頑張っていても、ものすごいスピードで社会が変化していって、誰もが振り落とされる可能性のある立場にいる、というのが今の世の中だから。

Aki:私の場合、計画を立ててやっているつもりだったんですけど、ことごとく崩れていくというか、うまくいかなくて。あっちに行ったりこっちに行ったりを続けていたので、それがコンプレックスにはなっているんですよね。「この職に就いて10年目です」「これ1本でやってます」という人を見ると、かっこいいなって思います。私、趣味も続いたことがあまりなくて。だから「続けられる」って、めちゃめちゃかっこいいことだと思うんですよ。

ーーいろんなことが続かない理由は、自分で何か見えているんですか?

Aki:飽き性っていうのもあるんでしょうけど。計画的な人生を歩んでいるはずだったんですよ。続けていたらちゃんと結果がついてくるような世界にいるはずだったんです。でもダメで。「私、ここにもいられないんだ」ってなっちゃって。

ーー逆に、なぜ音楽は3年以上、続けられているのだと思いますか?

Aki:「作る過程」というものが大好きなんだと思います。絵を描いたり、洋服を作っていたときもあったり、パティシエをかじっていたときもあったし、美容師のアシスタントだったりもしたんですけど、全部「化学」なんですよ。たとえば美容師だと、頭の丸みから逆算してデザインを考えてカットしたり、カラーの薬の配合をしたり、めちゃめちゃ奥深いんです。今は、曲やミュージックビデオも含めて、ひとつの作品ができあがる状態になるまでの過程が好きです。しかも音楽って、自由じゃないですか。より広い世界を作れるぞ、と思いながらやっています。妄想や自分の中に溜まっているものを、歌詞にもメロディにも乗せられるし、MVも作れるし、これは気持ちいいなって最近は思っています。

ーープロフィールには「MV、ジャケット写真を含むクリエイティブのディレクションも務める」と書いてありますが、普段曲を作るとき、映像や絵が同時に浮かんでいる感覚ですか?

Aki:「こういう映像が好きなんだよな」「こういう映像の中に飛び込みたいんだよな」というところから歌詞やメロディを引きずり出すこともあります。頭の中で想像する映像や絵って、無限じゃないですか。そこから文字やメロディに起こす感覚です。映像、歌詞、メロディ、歌うときの気持ちよさ、全部が頭の中でごっちゃになっていて、それらを考えながら書いていますね。その中でも最終的に大事なのは、気持ちよさですかね。

ーーパティシエや美容師は続かなかったけど、こうして音楽は続いているというのはーーこれまで社会に馴染めなかったけれど、音楽の世界は自分がいてもいい場所だと思えている、という感覚もあったりしますか?

Aki:たまたま、周りにいてくれる人たちに恵まれているんだと思います。不思議なんですよね。離れていかなくて、むしろどんどん寄り添ってくれる。私は人とコミュニケーションを取るのが苦手、かつ、人と深く関わっていくほど、その人と離れたくなるというか。あんまり、人に踏み込まれたくないんですよ。自分の心の中や人生に、踏み込んでほしくないんです。それなのに音楽をやっていると、無条件に容赦ない温かさを持った人たちが私を巻き込んでいってくれる。それが大きな違いなのかなって、今は思っています。それって、社会にいるとありえないんですけどね。私が「いいえ」って言っても、周りの人たちが音楽のほうへ引っ張ってくれるというか。普通だったら、「いいえ」って言った人間をほっぽり出しますよね? だから音楽は続けられているのかな。

ーーその人たちと関わるようになって、Akiさんの中で「人間って、信頼しても大丈夫なんだ」みたいな気持ちが多少大きくなったところもありますか?

Aki:基本的に、「人のことを信用しすぎない」という考えが根底にあります。信用しすぎないというのは、別に裏切られても大丈夫、という感覚。「こっちが信じた分、向こうにも信じてほしい」というふうに考えるのではなく、こっちが勝手に信じているだけなので、向こうが裏切るか裏切らないかは関係ない。もし向こうが自分の想像を超えるような行動をしても、こっちが勝手に信じただけなので、それはそれで大丈夫、という解釈ですね。人は自分が想像し得ないことをするという考えを根底に置いているので、人のことを信頼しすぎていない、というのはあります。

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