THE ORAL CIGARETTES、苦悩の先に見出した“強さ”と“美しさ” ホールツアーと3カ月連続リリースがもたらした音楽的深化

 7月から全国ホールツアー『Home Sweet Home TOUR 2026』を開催、じつに4年ぶりとなるホールでのライブを繰り広げてきたTHE ORAL CIGARETTES。近年はとくにライブハウスに軸足を置いてシーン全体を盛り上げようと奮闘してきた彼らにとって、久しぶりのホール公演はとても新鮮な刺激となっているようだ。そしてそのツアーと並行して、新曲も続々到着。7月の「LIMIT」、8月の「VOICE」、そして9月の「Stay the way you are」と、それぞれにまったく異なるカラーをまとった楽曲が立て続けに出てきたが、どれも今のオーラル、そしてその中心にいる山中拓也(Vo/Gt)という人間の姿をありありと映し出す、とてもリアルで赤裸々なピースである。苦悩と葛藤の日々を経て、光に手を伸ばすようにたどり着いたこの場所で、彼らが見据えるものとはなんなのか。3曲それぞれについてはもちろん、今後に控える挑戦についてもたっぷり語ってもらった。(小川智宏)

葛藤を抜け出すための“光” ホールツアーと3カ月連続リリースに込めた想い

――ホールツアー『Home Sweet Home TOUR 2026』、取材時点では9月の3本と地震の影響で延期となった熊本公演の計4本を残している段階ですが、ツアーを通しての手応えはいかがですか?

山中拓也(以下、山中):手応えはすごく感じています。俺らのお客さんの中にこんなにもホールツアーを待ってくれていた人たちがいたんだという感覚はすごくありますね。親子連れとか「家族を連れてきたかった」みたいな人も見かけるし、体に障がいを持っている子だったり、普段ライブハウスだと1時間半とか2時間耐えられないかもしれないけど、椅子があれば座って観られるっていう子が最前列にいてくれたりして。ライブに来たことはないけど音源を通して応援してくれていた人たちもたくさんいたんだなと改めて感謝するツアーになってます。俺らとしても今、自分たちの音楽に向き合う瞬間を作れていて、1本のライブの流れの中で、どうやってライブハウスではないホールの空気感を作って、ちゃんと「楽しかった」と思って帰ってもらえるかを考えながら、メンバーともステージ上でしっかりアイコンタクトを取ったり、幕間に話したりしていて。ライブ中にも進化できる瞬間があったりするので、すごく充実感を得ながらライブしている感じです。

――ホールだからこそ見えるファンの姿もあるし、それによって自分たちの音楽においても新しい一面を引き出せている、と。

鈴木重伸(Gt)(以下、鈴木):うん、ライブのセクションごとに、楽しんでもらい方というか、いろんな形を見せられているなというのはすごくありますね。

中西雅哉(Dr)(以下、中西):僕は4年前のホールツアーを振り返ると、個人的に結構ギリギリで頑張ってたなという印象があるんです。そこからライブを続けていく中で、去年アリーナツアーという自分にとっても大きな節目があって、そこでも自分の課題と向き合って。その先にこのホールツアーがあったので、ここを自分の課題の“答え合わせ”をする場所にしたいなっていうのがありました。課題に対して一つひとつドリルをクリアする感じで丁寧にやっていこうと考える中で、ツアーを通してクオリティが上がっていくことと、自分の中での達成感みたいなものが比例して進んでいく感じがあったんです。それがすごく心地よくて、今までにはない充実感につながっている気がします。

あきらかにあきら(Ba/Cho)(以下、あきら):僕はすごく楽しくやらせてもらってます。やっぱり新鮮な部分も多いし。でも、「僕ら、本当にライブハウスでたくさんやってきたんやな」って、改めてホールの経験値がないことに気づいて(笑)。より丁寧さが求められることも自ずと出てくるので、そこに関しては経験値が足りない部分をどう補っていくかという課題も見つかったりして。すごく充実した日々を送らせてもらっています。

――そんなツアーをやりながら、オーラルは3カ月連続で曲をリリースするというすごいこともやっているわけですけど、その意図というのはどういうところにあったんですか?

山中:2つ理由があって。まず1つ目に関しては、ホールツアーをやる意味みたいなところだと思うんですけど。ツアーの前に自分の中でいろんな葛藤があって、それがある限りホールツアーを気持ちよく迎えられない感覚みたいなのがあったから、まずそこから自分が抜け出すことが必要で。でも逆にホールツアーがあることによって、そこに光を自分の中で見出して、そこに向かって頑張ろうっていうやり方もあるなと思ったので、ツアーのテーマ付けを、今リアルに感じている自分の中での葛藤の光になるようなものにしようと思いました。それでセットリストを組んで、最後に「VOICE」をやることにしたんです。だから「VOICE」という曲が主軸になって、この3カ月連続リリースは動いてたんですよね。

 もう1つの理由として、今年は「自分たちのツアーに集中したいので、フェスは仲間のフェスしか出ません」と決めたからこそ、フェスじゃなくこっちを選んでくれた子たちへの感謝も表したいなと。その子たちに最大限ホールで何か感じてもらって、「夏フェスも行きたかったけど、オーラルのホールツアーに来てよかった」って思ってもらうために、やっぱり俺たちは勝たなきゃいけない。だからそのために、楽曲も込みでこのホールツアーの意味をわかってもらうっていうことをしたかったんですよね。

山中拓也

――なるほど。今“葛藤”という話がありましたけど、この3曲を聴いたときに、苦悩の根源も、それとどう向き合うかという姿勢も、そしてその先にある光も、全部トータルで表現できている感じがしたんですよね。それがまさに今おっしゃった1つ目の理由なのかなと思うんですけど、その葛藤というのはどういうものだったんですか? 音楽的なもの?

山中:全部ですね。自分の人生の中では人間関係だったり、音楽においてもそうですけど、1個成長するタームにくる悩みがあるんですよね、毎回。これってずっと堂々巡りで、周期的にあるんですけど。その中で「自分には才能がないかもしれない」ってグッと落ち込んじゃうときだったりとか、音楽に対してもう少し誠実に向き合えたらなとか、自分がいるフィールド、コミュニティの中で起こってくる問題に対して、自分がやってきてたことが正解だったのか、正解じゃなかったのかとかを悩む瞬間が、その時期にすごくいろいろ重なってしまって、何も手つかない状態になってたんです。

――おっしゃったように山中拓也にとってはその悩みというのは成長のきっかけでもあって、そういう意味ではそこからこうやって曲を作ってツアーをやって、もちろんまだ途上だとは思うんだけども、新しいフェーズに手をかけてる感じもある?

山中:今すごいあります。やっぱり音楽的に、理解をまた一歩深められたタイミングでもあるし、そこはすごく感じてますね。

数年の時を経て届けられた「LIMIT」 自由なアプローチがもたらした新鮮な刺激

――この3曲、特に「LIMIT」は、これを今のオーラルでちゃんと鳴らせた、ライブでやれてるっていうことってめちゃくちゃ大きいことだなと思うんです。ここにたどり着けたっていうのはまさにブレイクスルーじゃないけど、壁を突破した瞬間だったのかなと思うんですけど、これは実は結構前にできた曲なんですよね。改めて今回リリースするに至った経緯を教えてもらえますか?

山中:「LIMIT」はコロナ禍に作った楽曲だったんです。コロナ禍って、マスクがどうだとか、日本政府がどうだみたいな、そこでのいざこざみたいなのがあらゆるSNSで起きていて。物理的にも人と人が距離を置いている状態でそういうことが起こっちゃっているのを見ているのがすごく気持ち悪かったんですよね。それに対してもう曲で消化するしかないやって思って書いた楽曲だったんです。だからこれをTHE ORAL CIGARETTESで鳴らすつもりはまったくなかったんですよ。これをオーラルで消化しても、当時の世の中には何の効果も発揮しないだろうなって正直思ってたんです。一応楽曲として残しておこうっていうことで、メンバーでレコーディングしたんですけど。

――それを今回リリースすることにしたのは?

山中:そこから何年経っても、俺はこの楽曲がずっと好きで。その“好き”を……音楽をやっていくうちに、教養って広がっていくじゃないですか。自分の知る世界が豊かになればなるほど音楽に対する見方も変わってくる。自分も広げていきたいみたいなのがあったから『SUCK MY WORLD』のときもゴスペルっていう、たぶんロック好きな子たちが触れない音楽をロックと混ぜてやってみるとかもやってたんやと思うし。で、そこから「BUG」と「Enchant」、「ENEMY feat.Kamui」みたいな曲を出して、やっぱり最初はすぐ受け入れられない人もいたと思うけど、ちゃんとライブでやっていく中で受け入れてもらって、そういう音楽の広げ方が自分たちのファンにもすごく根付いてきた感覚があったんです。だから、自分の中では今このタイミングで「LIMIT」を出しても、ファンの受け皿はかなり育ってるから大丈夫だろうと思って出すことにしました。

――当時、メンバーはこの曲に対してはどういう認識だったんですか。

あきら:THE ORAL CIGARETTESとしての活動とは別で、遊びでやろうみたいな雰囲気だったんです。だから、みんなが普段使っているものとは全然違う楽器を使ってみたりとか、まさやんもドラムのシンバルをちょっと下げてみたりとか(笑)、みんなそれぞれ、THE ORAL CIGARETTESではない4人の集まりみたいな。

あきらかにあきら

中西:あの時期はとにかく拓也が、ライブはできないけど、バンドとして、音楽家としては前に進まなきゃいけないっていう活動をやってた時期で、ソロでいろいろプロジェクトをやったりもしていたんですよね。その中で、クリエイターとして生み出すものは出てくるし、それを形にするなら今しかないっていうところがあって。オーラルで曲を作るってなるとしっかり準備して、構成も作ってっていうことになるけど、これはすごくナチュラルに、バンドの原点みたいな感じでスタジオでメンバーと向き合ってレコーディングしました。その向き合い方は今のTHE ORAL CIGARETTESではなかなかないなって、振り返ると思うので、それが僕としては逆にすごく新鮮というか。そこから学ぶものがすごくある感じがします。

鈴木:今ライブで実際やっているんですけど、ほんまに自由度の高い曲だなと思いました。僕自身もそうなんですけど、お客さんの乗り方も結構自由度が高いなと思って。会場の後ろの方で、エアギターみたいなのをしながら乗ってる子もいたよという話を聞いたりして、そういう理解をしてくれて、それぞれの形で楽しんでくれてるのは、この曲の破壊力がすごいからなんだなって、ライブをしながらすごく感じてます。

LIMIT

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