濱田祐太郎、“音で選ぶニュース”に「調べる時もワクワクする」 スマートニュースが新機能「SOUNDTAG」を発表

 ニュースアプリを開くと、私たちは見出しや写真をざっと眺めてなんとなく気になった記事に指を伸ばす。ほとんど意識もしないこの“ザッピング”は、画面を見ずに音声でニュースを聞く人にとっては決して当たり前の行為ではない。

 スマートニュースは10月15日、視覚障がいのある人が約1秒の音を手がかりにニュースを選べる体験サイト「SOUNDTAG(サウンドタグ)」を期間限定で公開した。この日が「国際白杖の日」であることにあわせて、東京・赤坂のベクトルスタジオでは発表会も開かれた。同社ヴァイス・プレジデント 日本リージョン メディアビジネス担当のホン・ランドン氏が開発の狙いを説明し、後半には2018年の「R-1ぐらんぷり」王者で、自身も視覚障がいのあるお笑い芸人・濱田祐太郎が登壇した。

「受け取れる」のに「選べない」 ニュース選択格差という課題

 開発のきっかけは、同社が4、5年に一度、無作為に選んだユーザー全体を対象に行っているリサーチで寄せられた、視覚障がいのある人の声だった。ホン氏は当初、ニュースを聞いて理解すること自体が難しいのではないかと考えていたが、「それは実は全く間違いでした」と振り返る。音声読み上げ機能を使い、速いときは4倍速で聞き取りながら、必要な情報にはきちんとたどり着けていたのだ。

開発の背景を説明したホン・ランドン氏

 課題は別のところにあった。ニュースを聞くことはできても、どれを聞くべきかを選ぶまでに時間がかかり、いつもの範囲の外にあるニュースにも出会いにくい。目の見える人が複数の記事を見渡し、「なんとなく気になる」で選ぶ“ザッピング”が難しいことで生まれるこの差を、スマートニュースは「ニュース選択格差」と名付けた。

 説明の途中で会場の照明が落とされ、来場者は暗闇の中で短い音を聴いた。スタジアムの歓声とボールの音はスポーツ、街の雑踏は社会、雨や雷、鳥のさえずりは天気。プロモーションを担当する網谷隆志氏は、正解を当てることが重要なのではないと話す。目の見える人が画像やタイトルから記事を想像するように、耳でニュースを聞く人も音から記事を予測して選べるようになることが狙いだ。

スポーツ、社会、天気を表すサウンドタグ

 音は3つの要素で組み立てられている。1つ目はジャンルで、マネー・資産運用には硬貨の音、事件・事故にはサイレンといった具合に、全16ジャンルに連想しやすい音を割り当てた。2つ目はトーンで、AIが記事を分析し、ポジティブなら明るい音、ネガティブなら低めの音をジャンル音の後ろに加える。3つ目は緊急度で、スマートニュースの速報基準をもとに、緊急性の高いニュースには緊急音が入り、画面上のタグの点滅も速くなる。

約1秒の音でジャンル、トーン、緊急度を伝える

 タグをタップすると音と見出しが流れ、選んだ記事は標準・倍速・3倍速で本文まで読み上げられる。開発には一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティが協力し、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の案内役を務める視覚障がいのある人たちの意見をもとに改良を重ねた。

音と見出しを聞き、気になる記事を選ぶ

 興味深いのは、網谷氏が念を押したAIの位置づけだ。「AIが利用者に代わってニュースを選ぶ体験ではなく、今回サウンドタグが作っているのは、人が自分で好きなニュースを選ぶための手がかりです」。AIが“あなた向け”の答えを先回りして差し出すサービスが増えるなかで、SOUNDTAGはAIをトーン判定の裏方にとどめ、最後の一歩を利用者自身に残している。選ばせるのではなく、選べるようにする。この設計思想こそが今回の発表の核心だろう。

濱田祐太郎「1回全部聞いて、あ、このニュース興味なかったわって」

 後半に登壇した濱田は、普段からスマートフォンの音声読み上げ機能でニュースをチェックしている。「見えてる人はパッと見出しや写真で、このニュース興味あるなとか見ていけると思うんですけど、僕は1回全部聞かないと内容を把握できなかったりする」。全部聞いた末に「あ、このニュース興味なかったわ」となることもあれば、目当てのニュースにたどり着けず「もうええわ」と諦めることもあるという。ホン氏が挙げた課題を、当事者の実感として裏付ける話だった。

普段のニュースの探し方を語った濱田祐太郎

 SOUNDTAGを体験した感想を聞かれると、「1番最初に効果音が流れるんで、ニュースを調べる時もなんかワクワクするというか、ちょっと楽しいんですよね」と濱田。本当か嘘かわからない噂話のようなニュースには「イヒヒ」という笑い声の音を加えてほしいと、芸人らしい提案も飛び出した。

 トークでは濱田の「個人的3大ニュース」をサウンドタグとともに紹介する企画もあり、著書『迷ったら笑っといてください』の2度目の増刷はマネーの硬貨の音、『ぷよぷよ』でコンピューターに圧勝した話はデジタル・ガジェットの音にポジティブな音を重ねて紹介された。架空の「フルマラソン7分ジャスト」の世界新記録には、本物なら「イヒヒ」の音が流れるはずだと本人が付け加えている。

著書の増刷はマネーの音とともに紹介された

SOUNDTAGは「今日がスタート地点」

 今後への期待を聞かれた濱田は、ニュース以外での使い道も挙げた。「飲食店で、タブレットで注文するお店とかも多いと思うんで、サウンドタグがあったら、これ今飲み物のゾーンなんやなとか、揚げ物のゾーンなんやなみたいな、わかりやすくなっていくと思う」。

 一方でホン氏は、SOUNDTAGがまだ未完成のコンセプトであることも率直に認めた。実際のサービスに組み込むまでには同社だけでは解決できないハードルも多く、関係者と協力して一つずつ乗り越えるために、あえてこの段階で公開したという。

 体験サイトはスマートフォンから無料で利用でき、公開は10月28日12時まで。終了後は、他社も使えるよう、SOUNDTAGの音声データを無料で提供する予定だ。「今日をスタートにして、1年後、2年後にもっと大きな成果を作って、それをまた皆さんにお見せできるような日が来ればいいなと思っています」(ホン氏)

スマートフォンから体験できる「SOUNDTAG」

 ニュースを選ぶ手がかりを見出しや写真から音へと移し替えてみると、私たちが毎日どれほど多くの選択を「なんとなく」で済ませているかに気づかされる。AIが選んだ答えを受け取ることに慣れつつある今、自分で選ぶための手がかりをどう届けるかという問いは、視覚障がいのある人だけのものではないのかもしれない。

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