アジア大会eスポーツ、5個のメダルの裏側で残った“課題” ラッキーパンチで終わらせないために求められるものとは
増える代表戦、その舞台をどう生かすかがカギに?
注目が「たまたま」で終わらないためには、日本代表が戦う姿を一度きりではなく、継続して見せる場が必要だ。過去の『リーグ・オブ・レジェンド』や『VALORANT』の国際大会で日本チームが活躍した結果、SNSやメディアが盛り上がったように、普段そのタイトルを見ない人にとっても、「日本代表」は、わずかであっても試合を見る理由になる。
幸い、その舞台は用意されつつある。アジア・オリンピック評議会(OCA)は大会期間中の9月28日、アジア競技大会からeスポーツが外されるというネット上の報道を否定し、今後も継続する方針を示した。さらに2027年には、クウェートで第1回の「アジアeスポーツ&マインドスポーツ競技大会」が開かれることも決まっている。同じく2027年には、eスポーツワールドカップを主催する財団による国別対抗戦「eスポーツネーションズカップ」もサウジアラビアで行われる予定だ。国を背負って戦う機会は、むしろ増えていく。
問題は、トップ選手たちがそこに割ける時間を捻出できるかどうかだ。主要タイトルのリーグ戦は日程が詰まっており、オフシーズンにも大型大会が並ぶ。とりわけ空白の中心にある『リーグ・オブ・レジェンド』のようなタイトルほど、プロリーグの存在は大きい。代表活動を組み込めるかどうかは、タイトルの運営方針に大きく左右される。
5個のメダルを「礎」にするために求められること
報告会では今回の結果について、eスポーツ日本代表監督の福田真澄氏から「日本eスポーツのさらなる強固な発展の礎に」という言葉も聞かれた。その通りだと思う。日本のeスポーツの存在感を示すという意味で、「メダルを獲った」という肩書きは非常に大きい。日本のeスポーツ史に刻まれるべき1ページだ。
では、この先それをどう活かしていくか。
正直に言えば、いまの構造のままでは難しいというのが、筆者の見解だ。代表戦で注目を集めても、選手を送り出すチームやリーグの側は、主力の消耗や日程の調整といった負担を抱える一方で、得るものは多くない。サッカーであれば、FIFAが定める国際マッチウィーク(FIFAインターナショナルウィンドウ)期間中、一定の条件のもとでクラブには代表チームへの選手放出が義務付けられている。だがeスポーツには、IPホルダーや公式リーグの上に立ってそうした取り決めを作れる組織は存在しない。代表活動は、関係者の善意と、アジア競技大会という「特別な目標」に支えられて、ようやく成り立っていると言えるだろう。
今回日本代表が獲得した5個のメダルは、代表戦に価値があることを示した。11歳の金メダリストの囲み取材には、普段eスポーツを扱わないメディアが詰めかけた。だが、その価値を選手を送り出す側である所属チーム・団体に還元する仕組みは、まだない。それができない限り、注目は「たまたま」のまま、大会ごとに生まれては消えていくだろう。
とはいえ、サッカーと同じ仕組みを持ち込めばいいという話でもない。eスポーツには、IPホルダーという絶対的な存在がゲームを運営し、「興行」として煌びやかに彩られた公式プロリーグがある。既存のフィジカルスポーツと同じ枠組みで成長する必要は、きっとない。必要なのは、eスポーツならではのやり方で、代表戦とプロリーグが互いに得をする形を見つけることだ。
前述した2027年に向けて、eスポーツ選手たちが国を背負う舞台は、これから増えていく。福田監督の言う「礎」の上に何を建てるのか。その設計図を描くのは、メダルを獲った選手たちではなく、彼らを取り巻く側の仕事なのかもしれない。