AIが解決した、映像エディターの自主制作における悩み tapehead.labに聞く、生成映像と作家性
文字から画像に始まり、動画や音楽に至るまで、ほぼすべてのコンテンツがAI生成できるようになった。それらを総動員させて映像を作っているクリエイターも増えている。そのひとりがtapehead.labだ。
ミュージックビデオ「Lazy Talk」のバズで注目され、現在はAIを使った映像作品にも参加している。ただAIを使っただけでは到達しえないクオリティで、新作を投稿する度にSNSを騒がせる彼は一体何者なのだろうか。生成AIとの出会いや自身が受けたインパクトについて話を聞いた。(小池直也)
AIが映像エディターの自主制作におけるジレンマの回答に
―—AIに最初に触れたときのことを教えてください。
tapehead.lab(以下、tapehead):もともとは映像のエディターで、テレビやCMの映像を手がけています。今も会社に所属して映像クリエイターとして働いているなかで、AIに関するリサーチは結構早くからやっていて、3年くらい前からAIには触れています。
ちょうど『Midjourney』や『Stable Diffusion』がリリースされた時期。その頃はまだ動画化することはほとんどなく、「色々と画像生成できるようになったね」という感じでしたね。
―—今は主にどの動画生成AIを使っていますか?
tapehead.lab:最近は「SeeDance」も使っていますし、今までで言うと「Kling」や「Sora2」、「Vidu」なども触ってきました。リリースされたものは、ほぼ使っていると思います。
――なぜ個人としてAIの動画制作を始められたのでしょう?
tapehead:AIに興味を持っていたので、SNSで情報収集を進めていました。やっぱり当時からXが一番豊富でしたね。
そこで作ったコンテンツを発表している人たちを見て、これは面白そうだなと。そこから仕事とは完全に別で、自主制作で何か作ってみようという感じで今の活動を始めました。
――AIの登場によって映像制作や考え方は変わりましたか。
tapehead:ずっとエディターとして働いてきましたが、編集する人って素材を作れないんです。だから、なかなか自主制作には至らなくて。「いずれは映画監督もやりたい」という人で実際に制作している方もいますが、僕は全然そういう感じではなかったです。
だからAIの登場で素材を作れるようになったのは、すごい大きい。しかもパソコンだけで手軽に作れる環境になったので、自分も簡単にできるようになりました。仕事と関係なく、自分が作ってみたいものを作るという遊びができるようになったな、という捉え方をしています。
――この3年ほどでAIによるコンテンツ生成は随分と進歩しました。
tapehead:本当にすごいスピードだと思います。僕が「tapehead.lab」のアカウント運営を始めたのが1年前くらい、その頃にやっと『Runway gen 3』がリリースされて、やっと動画生成が成立するようになってきた印象でしたから。
それ以前のAI動画というと、静止画を無理やり変換し続けているような、どこか気持ちの悪いものが多かったんです。そこから映像として扱えるようになって、1年でもっとすごい次元まで進んでいますね。
――tapeheadさんのなかで、AIにまつわる直近3年の出来事で、一番のターニングポイントとなるような進化は何ですか?
tapehead:やっぱり、ここ1年で1番感動したのは2025年6月に「Midjourney」の動画モデル「V1 Video Model」がリリースされたことです。その頃は、実写風の映像だとなんとか動かせるようになってきたところでしたが、アニメーションやイラストを動かす手段が少なかったんですよ。動画生成をしても、全然動かない。
それが「V1 Video Model」で派手に動くようになって。あれは、めちゃくちゃ感動しました。勢いのままに、一晩でMVを一個作ったんですよ。「Dance in the debris」という曲のMVなんですけど。それぐらい興奮して、バーッと生成してつないで、という感じでのめり込んでいました。
あと動画の作り方が変わったなと思うのは、「NanoBanana」が出た2025年8月ですね。作り方の幅が広がったというか、絵が描ける人だったら何の問題にもならない「一貫性」の問題を、僕らみたいに描けない人間でも工夫してクリアできるようになったので、「NanoBanana」はめちゃくちゃ大きかったです。