連載「Create with AI」第7回:Mankyu
AIは“「魔法の箱」ではなく「パートナー」 動画クリエイター・Mankyuが語る、キャラクターを“魅せる”動画制作術
生成AIとクリエイティブ。その可能性をめぐる議論が日々更新されていく時代に、クリエイターたちは何を思い、どう距離を取りながら、創作と向き合っているのか。
連載「Create with AI」第7回は、AI動画クリエイター・Mankyu氏にインタビュー。映像制作の経験がないところから2025年8月にAI動画制作を始め、1年あまりで複数のコンテスト受賞を重ねてきた同氏に、大きな反響を呼んだワンカット風ライブMV『LiveMV : Ghostnote(Live ver.)』制作のきっかけやAIとの作業分担の考え方、そして技術が日々更新されていく環境でどのように制作を続けているのかを聞いた。
■プロフィール
MankyuAI動画クリエイター。2025年8月から趣味でAIを活用した動画制作を開始。AIでアニメイラストやMV、ショート動画を中心に制作している。最優秀賞を含む複数のコンテストで受賞歴あり。
頭の中にしかなかった光景が形になるのがAI動画の面白さ
ーー2025年8月から趣味でAIを活用した動画制作を開始されたとのことですが、そのきっかけと当時の心境について教えてください。
Mankyu:きっかけは、YouTubeでAIを使って制作されたMVを見たことです。「AIでこんな動画まで作れるんだ」と驚き、自分でも試してみたくなりました。当時は明確な目標や作りたい作品があったわけではなく、純粋な好奇心からのスタートでした。
ちょうど同じ頃、Xでフォローしていた方がAIでMVを作るためのコミュニティを立ち上げたので、そこに参加し、いろいろと学びながら制作を始めました。もともと、映像を含めたクリエイティブ分野での経験がまったくなかったので、表現したいことをプロンプトとして言語化する作業も動画編集もすべてが新鮮で一気にのめり込んでいきました。
もちろん思い通りにならないことも多かったのですが、頭の中にしかなかった光景が実際に動いたときの感動が大きく、気づけば毎日のように試すようになっていました。実生活で感じたことや、自分が「いいな」と思ったものを映像として形にできることにAIの面白さを感じています。
ーー2026年5月に発表されたワンカット風ライブMV『LiveMV : Ghostnote(Live ver.)』が大きな反響を呼びましたが、この作品はどのような経緯で生まれたのでしょうか。
Mankyu:きっかけは、AIアーティストのみで開催されるイベント「AI音楽フェス」で、皆さんがライブ映像を作っているのを見たことです。正直なところ、最初は「自分もライブ動画を作ってみたい」という気持ちにしかなく、作品として緻密に計算して企画したというよりは、かなり勢いで作り始めた作品です(笑)。
ロケーションをショッピングモールにしたのも、週末にたまたま訪れたショッピングモールの中央広場でイベントが開催されていたことがきっかけでした。その光景を見て、「ここをライブ会場にしたら面白そうだ」と思ったんです。こうした日常の思いつきや実体験を結びつけ、すぐに映像作品として形にできることも、AI動画の大きな魅力の一つだと思います。
【LiveMV : Ghostnote(Live ver.)】
最近AI音楽フェスとかでみなさんがライブ映像作ってるのを見て作りたくなったのでライブ動画を作ってみました☺️GPT Image2で作った画像をStart/Endフレームで繋げているだけの簡易的なものですが、いつかAI音楽フェスも出てみたいですね✨️
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画像:PixAI /… pic.twitter.com/hHGJosDxzR— Mankyu | AI動画生成 (@manaimovie) May 28, 2026
「指示の骨格は自分、展開と量産はAI、最後の選別は再び自分」
ーーAI動画制作にあたって、Mankyuさんがとくに大切にされていることや、こだわりがあれば教えてください。
Mankyu:一番大切にしているのは、キャラクターをいかに魅力的に見せるかということです。基本的にまずキャラクターを作り、そのキャラクターをどう動かしたいか、どんな動画に登場させたいかを考えます。多少の破綻があったり、映像のセオリーから見ると少し変わったカメラワークや構図だったりしても、キャラクターの表情や仕草が魅力的であれば、そのまま採用することも多いです。だから「映像としての正しさ」より、そのキャラクターが生き生きして見えるかを優先しています。
もう一つ大切にしているのは、動画生成モデルだけに限定せず、さまざまなAIや技術を試すことです。LLM(大規模言語モデル)、画像生成、3D、ゲーム制作など、AIでできることは日々進化しています。直接動画に関係がないように見える技術でも、触ってみることで表現の幅が広がったり、制作を効率化するヒントが見つかったりします。
ーー動画生成モデルをはじめ、さまざまなAIを積極的に活用されているとのことですが、ご自身の手で必ず担う部分や「ここはAIに任せない」と決めている領域があれば教えてください。
Mankyu:AIに任せているのは、「量が必要な作業」と、「ルールとして言語化できる作業」です。複数候補が必要な画像の一括生成や、やりたい表現を映像向けのプロンプトへ展開する作業、BPMや歌詞のタイミング解析、トリミング、簡単な編集処理、デプスマップ化(画像から奥行き情報を抽出する処理)などは、Codexや各種エージェント、Skillに寄せています。
一方でAIに任せないのは、「何を作りたいのか」という作品の核です。世界観やキャラクターの不憫さ、ライブ映像であれば「熱」と「かわいさ」のギャップなど、作品の中心にある感覚は自分で決めます。最終的にどの一枚、どのテイクを残すのか、どのタイミングでシーンをつなぐのかという判断も自分で行います。
プロンプトも最初から丸投げするのではなく、まず自分でやりたい動きを言葉にし、それをAIに展開してもらうことが多いですね。「指示の骨格は自分、展開と量産はAI、最後の選別は再び自分」という分担に近いと思います。
ーーGhostnote制作の続編スレッドでは、Codexを使った効率化や、フレーム画像作成、プロンプト設計、絵コンテ事前チェックなど、具体的なワークフローを詳細に公開されていました。ご自身の制作ワークフローを自分だけのものとせず、一般向けに公開されている理由を教えてください。
Mankyu:普段、作ることに精いっぱいですし、誰かに分かりやすく説明することもあまり得意ではないので、それほど頻繁にワークフローを公開しているわけではありません。ただ、それでも多くの反応をいただいた作品や、制作方法について質問をいただくことが多かったものについては、できる限り公開するようにしています。
積極的に公開する理由があるというより、「公開しない理由があまりない」という感覚のほうが近いのかもしれません。ワークフローは、モデルや周辺のAIツールが進化するたびに変わっていきます。そのため、特定の手順だけを秘密にすることにそこまで大きな価値を感じていません。
それよりも自分が実現したい表現に対して、その時点の環境でどのように試行錯誤し、何を基準に判断したのかという「過程」のほうが大切だと思っています。「その試行錯誤を続けられるか」、そして「自分自身が楽しいと思えるか」。それがAI動画、ひいてはAI全般と長く向き合っていくうえで、一番重要なのではないかと感じています。